11日の内閣改造で、小泉進次郎氏が環境大臣に就任をしましたが、それ以降一つの議論が勃発しています。それは、東京電力福島第1原発の汚染処理水を大阪湾に放出することについての議論です。
事の発端は大阪市の松井一郎市長が「科学的に安全性が証明されれば、大阪湾での放出を受け入れる」と発言し、さらに小泉環境大臣に「口先だけでなく、行動で示すべき」と言った事です。この発言に対し、小泉大臣は「軽々に所管外の者が発言することで、地元福島県の方、そして漁業関係者の皆さんを傷つけてはならない」と発言しました。所管外、つまり放出するなら当事者は東京電力、そして所管は経済産業省ということでしょう。
この点についてはちょっと置いておいても、私は松井市長、吉村知事の見識は立派だと思います。先日の台風による千葉の停電でも我々は電気の恩恵というのをつくづく知りました。ですから、原発事故の後始末を国民的に受け入れていかなければいけない、解決していかなければいけないという意味で、あえて困難なことに発言をしている、そのことが立派ということもあります。けれどもそれ以上に常識的な発言だと思います。
その前に、まず汚染処理水をちょっと理解しなければなりません。
汚染処理水は事故後の原発を冷却している大量の水です。原子炉を冷却した水には放射性物質が含まれた汚染水です。そこから放射性物質を取り除いたのが汚染処理水ですが、唯一トリチウムだけが取り除けていません。この処理水が1000基のタンクで1,151,884t(2019.8.22現在)が野積み状態にあります。
ではそのトリチウム濃度は法規制の濃度限度6万ベクレル/ℓよりも十分に低い1500ベクレル/ℓ以下で運用するように自主規制されています。仮にガブガブ飲んだとしても10日で体外に放出されるという性質であり、松井市長は「科学が風評に負けてはダメだ。自然界レベルの基準を下回り、環境被害がないものは、国全体で処理すべきだ」とも発言しています。
私もこの意見には同感です。福島で海に放出したら、ただでさえ今でも風評被害が残っているわけですから、さらに被害が増します。だから、大阪府や大阪市が今回の発言をしているというのは本当に偉いと思います、しかし、大阪府漁業協同組合などは大反発をしています。また大量のタンクを実際に大阪まで運んでいくということにかんしては、実現性に別問題があると思います。
一方で、こうした発言に対して、風評拡大にもつながりかねないような批判論は慎むべきだと思います。特にマスコミです。
何のための基準なのか。そもそも基準がおかしいとすれば基準に関して議論の余地がありますが、基準を守って行動しようという趣旨なので、マスコミは正確に伝えてほしいですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年9月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。