日米貿易協定合意:これからはステーキがお・と・く!

日米首脳会談がニューヨークで日本時間9月26日未明に行われ、日米貿易協定が合意されました。安倍首相とトランプ大統領と共に記者会見を開き、安倍総理は「これは両国の消費者全ての国民に利益をもたらすウィンウィンの合意になった」と発言しました。

一方のトランプ氏は「米国の農業・畜産業従事者にとって本当に多額の利益をもたらすことを望んでいる」とコメントし、来年の大統領選挙に向けたアピールポイントができたということでしょう。

トランプ政権誕生以来、トランプ大統領は不公平だといって様々な国に二国間協議を迫ってきました。多国間であれば、反対を表明する国がいれば、交渉をまとめることができませんが、二国間であればアメリカが常に強いという関係で推し進められますから、カナダやメキシコ、韓国などはアメリカにかなり譲歩して交渉をまとめました。米中の貿易協議はまだまだ先が遠いという状況ですが、日本は日米関係が良好なことを背景として今回まとまりました。

やれやれという感じですが、これは日本経済全体にとっても私はいいことだと思います。

トランプ大統領が言う農家の勝利ということに関しては日本側が譲歩した牛肉や豚肉などの関税のことでしょう。牛肉は現在38.5%の関税ですが、最終的には9%まで下げる。豚肉は1キロ当たり482円かかっている関税ですが、こちらも将来的には50円になります。

豚肉だったら100gあたり43円も関税が下がりますから、我々にとって大きな値下げになるでしょう。大きな影響があるとはいえ、段階的な引下げですから、牛肉は14年後、豚肉は10年後になります。

アメリカの立場は安全保障上、追加関税も辞さない。すなわち「上げる」というのが基本スタンス。

一方の日本は、TPPで最終的には「ゼロ」にすると約束したのではないかということで「下げる」というのが基本スタンス。

すなわち両者の主張は逆だったんです。

日本はアメリカから農産品をたくさん輸入していますが、日本が輸出する品目の中で「自動車」の占める割合はとても大きいです。日本からアメリカへの輸出総額15兆円のうち自動車は4兆5000億円と約3割を占めています。

今回の日米貿易協定の合意、結論からうすると追加関税は回避できました。しかし、「下がる」ということもなく「継続協議」となりました。

今回の共同声明では「日米両国は信頼関係に基づき、貿易協定及びデジタル貿易協定を誠実に履行する。これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。また、両国は他の関税関連の問題の早期解決に努める。」と言っていますので、アメリカがいきなり関税を引き上げるなどということはないと日本は主張していおり、安倍総理大臣も記者会見でトランプ大統領に確認したと言っています。この部分を常識的に読む限り、確かにそうだし、安倍総理も本当に確認したんだとは思います。

ただ常識的にと言いましたけど、トランプ大統領は常識的じゃないですからね。

安倍トランプ関係も良好、日米関係も良好ということです、この協定が発効されてから4ヶ月以内に、まだ継続中のものについてはさらに協議をスタートさせるということですから、まだまだ安心はできません。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。