まぎらわしい「予報円」はやめよう

池田 信夫

台風19号が近づいてきた。こういうとき台風情報でわかりにくいのは、「予報円」と「暴風警戒域」という二つの円が描かれていることだ。

これが気象庁のホームページにある台風の進路予想だ。予報円は台風の中心の位置の誤差だが、これを暴風域と混同する人が多い。こんなまぎらわしい表示をしているのは日本だけだ。たとえばアメリカのNOAAでは、次のように描く。

ここではハリケーンの予想位置はピンポイントで描かれ、その周囲に扇形に進路の誤差が描かれている(暴風域は描かれていない)。

もともと台風の進路予測はスーパーコンピュータで計算されるので、その予想位置はピンポイントで決まっているが、気象庁はこの誤差を円形に描き、しかも中心位置を描かない。

昔は気象庁もピンポイントで中心を描いていたが、1980年代に予想がはずれて台風で漁船が沈没する事故が長崎で起こり、国会で気象庁長官がつるし上げられてから、中心位置をぼかすために予報円ができた。それが台風の暴風圏に見えるので、暴風警戒域と二重に描くようになった。

中心の位置を暴風域と誤認すると、台風が北上するにつれて大きくなるように見えて混乱する。もうこんな責任逃れはやめ、中心位置を明示して扇形の表示にすべきだ。