夏の賞与……ありませんでした。

先週8日に厚生労働省が発表した統計によると、今年8月の賃金は前年同月比すなわち昨年8月に比べて0.6%減りました。数字としては、ほんの少しという感じですけれども、内訳を見てみると、基本給は0.3%増、残業代などは0.9%増、ボーナスなどは11.4%減になりました。もともと企業は基本給などを上げることに対しては極めて慎重で、売り上げや利益が伸びたときに賞与で対応するという傾向があります。

一方、8月の消費者物価指数(小売価格の変動)は0.5%の上昇になりました。携帯電話料金やガソリン価格は下がりましたが、原材料価格があがったことによって生鮮食料品などを除く食料品全般が値上がりしたり、人件費の高騰によって様々な分野で価格転嫁が行われたことによった商品の値上げがあります。

物の値段が上がらないということは、我々消費者サイドから見たらいいことのように思えますが、日本銀行は消費者物価指数の2%上昇を目標にしていますので、0.5%というのは程遠い数字ですね。

なぜ物価が上がっていくことがいいことなのかというと、それは経済成長を意味するからです。その意味でベストなのは、給料が上がり、そして物価も上がることが一番望ましい事です。

ところが気になるのは、労働者1人当たりの8月の給与総額。金額は27万6000円とパート・アルバイト・正社員も皆含めた1人当たりの平均ですから、多い人や少ないが当然いるわけですけれども、2ヶ月連続で前年度比を下回りました。さらに先ほどの金額から物価の上昇分を引いた実質賃金は8ヶ月連続で下がっています。

物価の方は、8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0.5%プラスで32ヶ月連続のプラスでした。

8ヶ月連続で給料はあんまり上がらないけれども物価を少しずつ上がり続けてきたにも関わらず、ここ2ヶ月においては給料も実際下がったという結果になっています。これからもこの状態が続いていくと、ちょっとこれは困りますよね。

さっき言ったのは、国民全体の平均を表した統計の数字ですから、国民にもいろいろいて、立場がそれぞれ違いますので統計上の話ですが、国民にとってはちょっと気がかりで嫌な傾向だと言えます。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年10月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。