苦渋ながら最良の選択と言える五輪マラソン札幌開催

岡本 裕明

小池百合子都知事の恨み節が聞こえてきそうです。「なんで今更!」ということでしょう。ただ、北方領土開催云々というのは言い過ぎです。ほとんどたわごとにしか聞こえないので小池さんの人格と器が小さく見えるので止めましょう。

(MGC公式サイトから:編集部)

(MGC公式サイトから:編集部)

東京都は金満都市であります。そして勝手にお金も人も流入してくるため、入ってくることを当然としています。しかしながら、少子高齢化社会と地方活性化が国全体で大きく課題となる中、東京都だけが独り勝ちする構図は必ずしも正しいとは思いません。

オリンピックは開発途上にある国の社会インフラ整備の促進という重要な役目を持っています。今回の東京の開催はその点についての充足度はほとんどなかったわけでむしろ、大会開催コストを節約できるということを前面に出した真逆のロジックがそこにありました。

その中で開催費用負担において近隣他県(埼玉、千葉、神奈川)との負担額で大きく揉めたことはご記憶の方も多いでしょう。要するに小池都知事はナローマインド(狭量)なところがあるように見えるのです。自己利益の極大化ばかりが目立ってしまっているのです。それゆえに今回の札幌の話についても怨嗟しか出てこなくなっています。

私の10月1日付ブログでは望ましかったオリンピック開催時期の見直しと題して安全で選手ファーストのオリンピック開催があるべきということを主張しました。それはドーハの世界陸上の悲惨ともいえる状態を見て抜本的見直しが必要なのだろうと改めて考えたからです。IOCのトーマスバッハ会長も同じことを考えたのでしょう。そして仮にオリンピックで選手や観客に暑さが原因で何らかの大きな事故が生じた場合、その責任問題は今後のIOCの運営そのものに大きな影響すら与えるだろうことは容易に察することができるでしょう。

となれば東京都としてはここはむしろ喜んでマラソンと競歩の札幌開催を支援すべきです。台東区が「おもてなしのために何年もかけて準備してきたのに」と嘆いているようですが、浅草、雷門はオリンピックがあってもなくてもいつでも観光客で満杯であり、何の影響もありません。

今、開催されているラグビーは日本全国、北海道から九州まで12の会場で行われています。だからこそ、相乗効果もあるし、地方在住の多くの方が楽しんでもらえる機会があるのです。一方のオリンピックはほとんどが東京地区であり、開催期間中はむしろ経済は沈静化します。理由は期間中は海外旅行客が日本を敬遠する傾向が出る上に人が皆、東京に集中してしまうのです。だったらマラソン/競歩をcarve out ((大きいところから切り取ること)することは本来のオリンピックの目的からしても正解ではないでしょうか?

むしろ私としてはここから東京と札幌の連携を通じた様々なビジネスや交流を生み出せると考えています。また、北海道にどうやって移動するか、その手段は飛行機、新幹線、フェリーだけではなく、安価なバスを考える人は多いのです。どうやって北海道までバスで行くか、それならば沿道の経済も潤うことが可能かもしれません。いくらでも経済効果は作り出せるのです。小池都知事にとってはこれはチャンスにもなりやしないでしょうか?「さすが、小池さん、次も頼むよ」と言われるような大都知事の器量を見せてもらいたいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年10月18日の記事より転載させていただきました。