そういえば、20年くらい前にこんなキャッチコピーのポスターがあった。
「育児をしない男を父とは呼ばない」
当時、安室奈美恵と結婚していたサムが、二人の間に生まれた子を抱いたポスターである。厚労省のものだ。
では、育児をしていて「仕事をしない男」は「父」と呼んでもらえるのだろうか。
昨日も仕事をしなかった。いや、厳密には朝から原稿を書き、自主ゼミの指導をし、1コマ教え、学内の委員会に出席したのだけど。するべき仕事ができていない。思うようには働けていない。朝から保育のトラブルで午前中、原稿の挽回タイムがつぶれる、という。こうやって、仕事のできない人、しない人の烙印が押され、世の中から消えていく。
でも、育児はしている。休みの日になると、ドライブに連れて行ってくれる父という、ドラマの中の父のようなことをやっており。思えば、我が父は運転免許を持っておらず。そもそも脳腫瘍で半身不随だった。祝日は娘を連れて横浜に。「左利きのエレン」展に。夜は神田に下山武徳さん、MAD大内さんのライブに。アコギとドラム。娘がぐずったので途中で失礼したが、何か感じるものがあったようで。
別に有名な幼稚園や小学校に、ましてや東大に入れるような教育はしていない。目の前のことで精一杯だ。今日も。自分の夢を背負わせるつもりもない。こだわっていることがあるとするならば、「すごい」よりも「かしこい」よりも「かわいい」よりも、私にとって最高に嬉しい褒め言葉「面白い」「愛がある」と言われる人になってほしいということだな。あとは、一生懸命働けていない私を父だと思い続けてくれること。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。