人がどんな病気なのかを知るよりも、病気の人がどんな人なのかを知る方が大切だ

中村 祐輔

福岡から戻ってきた。昨日から始まった日本癌治療学会での冒頭の医療用AIについてのセッションで話をした。時間は限られていたので、内閣府のAIホスピタルプロジェクトの全体を話する時間はなかった。プロジェクトが正式に立ち上がって1年で、かなりの進捗があったので残念だったが、限られて時間で最大限の情報を発信するのが演者の役割だ。

11月11日には日本医師会館で「AIホスピタルプロジェクト」のシンポジウムがあるので、進捗をお知りになりたい方には是非参加して欲しい。時間は午後1時から430分までの予定で、詳細はこちらのページでご覧いただきたい。

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がん治療は、ゲノム、ロボット手術、人工知能、免疫療法、プレシジョン医療というキーワードをもとに大きな変化を遂げつつある。しかし、どんなに技術が進歩しても、われわれが肝に銘じないといけないことは、ヒポクラテスが言っていたように「人がどんな病気にかかっているかを知ることよりも、病気にかかっているのがどんな人なのかを知ることのほうが大切だ」である。

博識だが「病気の人」に敬意を払わず、画像と検査結果だけに目を向け、患者さんに触れることもなく、単に病気を追いかける医師と、知識はトップクラスではないが、常に患者さんという人間に寄り添っている医師、どちらの医師が主治医になる方が患者さんや家族にとって平穏な闘病生活を過ごせるのだろうか?

専門医や認定医制度は、技術や知識の評価を主にしているが、人として患者さんに接する教えがおろそかにされているように思う。ひとりであがいててもどうにもならないのだが。

そして、最近は体力も衰え、長時間の学会の懇親会などは億劫なのだが、一昨日の夜は多くの旧知の人に会えるので参加した。7年以上前に、米国に旅立って以来初めて顔を合わせた人もいて懐かしかった。しかし、一番の収穫は岩崎宏美さんの生の歌を聴くことができたことだった。

なぜかしら、彼女が「スター誕生」で合格した場面を今でもよく覚えている。自分で還暦の記念に赤いドレスを作ったと言っておられたが、どこから見てもアラフォーだ。「ロマンス」や「聖女のララバイ」など耳になじんだ曲を30分強堪能した。歌と共に、青春の一場面、一場面がフラッシュバックしてきた。

さだまさしさんが作った「残したい花について」というタイトルの2018年リリースの歌も披露された。心に伝わる美しい歌声と歌詞だった。懇親会に参加して得をしたような気分になった。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。