「プロレス国会」が官僚のブラック労働を生み出す

10月11日、大型の台風19号が首都圏に接近していた夜、霞が関では15日の参議院予算委員会の審議に備えて数百人の官僚が待機していた。野党の質問通告を受けて答弁を書くためだ。その提出期限は17時と決まっていたが、期限を過ぎても質問が出てこない。

これに困った1人の官僚が「森ゆうこ糞」というツイッターアカウントをつくり、国民民主党の森ゆうこ参議院議員に対して「早く質問通告を出してくれないと台風で家に帰れなくなる」とつぶやいた。これと前後して、官僚とおぼしき多くのアカウントが「早く質問通告を出してほしい」とつぶやき始めた。

「情報漏洩」騒ぎで自爆した野党

この国会待機というのは、日本独特の習慣である。 昔は国会で野党から出てくる細かい質問には政府委員として出席した官僚が答弁していたが、この制度は「官僚主導だ」として廃止され、今は原則として閣僚が答弁する。

しかし閣僚があらゆる問題に精通しているわけではないので、ぶっつけ本番で質問をされても答弁できない。このため前々日の正午までに質問内容を通告することが与野党の話し合いで決まった。だが、これはまったく守られていない。

今回の森ゆうこ議員の場合にも、最初に出たのは質問項目だけで、追加の質問内容が何度も出され、最後に質問が更新されたのは12日の午前0時25分だった。ここまでは珍しいことではなく、森氏が謝罪すれば終わった話である。

ところが16日になって彼女は「質問通告が事前に漏洩されたのは問題だ」と論点をすり替え、国民民主党の原口一博国対委員長が加わって、野党の「調査チーム」が官僚にヒアリングを始めた。

彼らは「官僚のツイッターで質問通告が外部に漏洩された」と騒いだが、これは森氏が11日の20時22分に自分のツイッターで公開した情報だった。

規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ座長代理である原英史氏に内閣総務官室が送った電子メールに質問通告のFAXが添付されていたが、これは彼を参考人として国会に出席要請するための資料だった。原氏はこの話を(私を含む)数人に知らせたが、彼は民間人なので国家公務員法の守秘義務は適用されない。

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