首里城火災の責任と中国“隷属”イベントへの疑問

八幡 和郎

首里城は琉球処分後は荒れていたが、政府の手によって整備され、正殿は“琉球王国の祖”としている源為朝やその子の舜天王を祀る神社だった。だが、地下には軍の司令部があり、アメリカ軍からの砲撃で破壊され尽くした。

海 風/写真AC

戦後は琉球大学のキャンパスになっていたが、移転後には国営の公園となって復元整備が進められた。他県での城跡の類似例をみると、那覇市に払い下げられるのだが、それを国の予算で行うという特別の配慮がされた。

しかし、2019年2月1日に管理・運営は国から沖縄県に移管された。現在沖縄県は指定管理者である一般財団法人沖縄美ら島財団に管理を任せているが、どちらにしても国有財産を県が実質管理しているという理解でいいだろう。

火事の原因はまだ分からないが、報道やネット情報によると、折しも『首里城祭り』(10月27日〜11月3日)が開催中で、警備員に任せて帰ったようだ。

ネットでは「CIAの仕業だ」とか無茶苦茶な話も流れている。もちろん現時点で断定をするものではないし、原因究明を徹底すべきだが、この行事の準備と火災の関連性、たとえば無理な電気の使い方などの漏電を起こした可能性があったのかどうか。

NHKニュースより:編集部引用

しかし、いずれにせよ、2月から県に管理主体が移って火事になったのだから、借家人としての県の責任は免れまい。民事補償の問題も生じるかもしれない。

そもそも、城郭の復元は地元の市の仕事であって、首里城は国が特別に配慮したものだから、もういちど国が負担するというのが自明の理ではありえない。そういう甘やかしはするべきでない(※「自明の理でない」と言うだけで「するべきでない」といっているのではないので念のため)。

もう一つ、以前から気になっていたのが、中国との関係をやたらに強調していたことだ。沖縄生まれの海上自衛隊OBの評論家、恵隆之介氏も昨日のフェイスブックで、

最近は首里城正殿前で中国冊封使による冊封儀式を毎年行い、中国人使者に琉球王が三跪九叩の礼をする光景を再現して、中国人観光客に阿ておりました。

などと指摘していた。

だいたい、沖縄に人々は主として平安時代以降に南九州から渡ってきた人が主体であり、中国に朝貢していたとはいえ、島津領であり幕府にも服属していた。そのうち、あえて中国との関係ばかりが強調されるのもいかがなものか。

国有の施設でわざわざ中国への卑屈な関係のみを再現する祭りをするなど許されるべきだとは思わない。より密接な島津や幕府との関係もその重みに応じたイベントをしたらどうか。幕末に琉球を訪れたペリーは沖縄は中国の属国でなく日本だと観察の結果を報告している。

また、首里城正殿については、もともとどのようなものだったか、材料が少なく、できあがったものは、過度に中国風であるという批判がされてきた。たとえば、赤い瓦が葺かれているが、もともとは黒い瓦だったとも言われる。

もし復元するなら、そうしたことも十分に検討するべきものだろう。

このあと首里城については、また、書いていく。

(私は沖縄総合事務局に勤務経験があり2年間沖縄県民だったから、これは、その立場も踏まえて書いたもので、本土の人間としての立場だけで書いたものではない)

八幡 和郎
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授