立憲議員も歓迎?極左「アンティファ」が日本にも

長谷川 良

ドイツでは目下、極右派の台頭が大きな政治問題となっている。旧東独ザクセン=アンハルト州の都市ハレ(Halle)で先月9日、27歳のドイツ人、シュテファン・Bがユダヤ教のシナゴーグ(会堂)を襲撃する事件が発生し、犯行現場にいた女性と近くの店にいた男性が射殺された。多くのドイツ国民はシナゴークへの襲撃事件に衝撃を受けたばかりだ(「ユダヤ人を標的:旧東独でシナゴーグ襲撃事件」2019年10月11日参考)。

「極左団体アンティファ」(「大紀元」日本語版2019年11月6日掲載から)

ドイツ連邦政府は先週、反極右対策として9項目からなる対策パケットを決定した。その中には、武器法の強化、予防対策の強化、ネットでの憎悪・扇動に対する継続した監視体制などだ。同時に、ドイツ16の連邦州に広がっている民間の自警団(Burgerwehren)の存在について、治安関係者は、「彼らは公式の警察隊ではない。極右への潜在的予備軍だ」と受け取り、対策を検討している。

極右派の台頭はドイツだけに見られるのではなく、米国、ニュージランドなど世界各地で広がっている。反難民・移民、反ユダヤ主義、外国人排斥などを掲げ、銃乱射テロ事件を引き起こしている。
関心が極右の動向に注がれ出したが、ここにきて極左組織「アンティファ」の拡大に警戒を呼び掛ける声が高まってきた。海外中国メディア「大紀元」は6日、「極左団体『アンティファ』、カナダで保守派講演会を妨害」という見出しで大きく報道している。「アンティファ」とはアンチ・ファシズムの略称だ。

アンティファは、「ファシズムと戦う」ことを主要理念としている。メンバーは共産主義者、社会主義者、その他の過激思想で構成され、暴力の使用を躊躇しない。「大紀元」によると、「人種や性差別への激しい抵抗運動を掲げる極左暴力組織やその思想を指す。敵視する対象の行動を阻止するために騒乱、襲撃、といった暴力を辞さない」という。トランプ米大統領は7月28日、ツイッターで、アンティファは「人の頭をバットで殴る急進左翼で、テロ集団に指定することを検討している」と受け取っているほどだ。

「大紀元」の「カナダで極左団体が保守派講演会を妨害」という見出しを目にした時、直ぐにカナダのトロント大学心理学教授ジョーダン・ピーターソン氏(Jordan Peterson )を思い出した。ひょっとしたら、同氏の講演会が極左団体から攻撃されたのではないか、と思ったからだ。

“思想界のロックスター”ことカナダ・トロント大学心理学教授ピーターソン氏(ウィキぺディアから、Adam Jacobs氏撮影)

同教授は現代、最も注目されている保守派論客だ。ユーチューブを利用して世界の若者に語り掛けている。教授の著書「Maps of Meaning」を読んだり、話を聞いた多くの若者たちが、「人生に生きる意義を見出した」と感動している。リベラル派のメディアは「思想界のロックスター」と少々皮肉を込めて論評している。彼が行く先々で多くの若者たちが集まる一方、その講演会を妨害する極左団体も集まる。その状況は戦場のような緊迫感が漂うほどだ(「J・ピーターソン『宗教抜きの倫理・道徳はない』」2018年2月23日参考)。

「大紀元」が報じた「保守派講演会」は幸いピーターソン教授の講演会ではなかったが、保守派対極左の対立構造はここにきて一層先鋭化してきているのを感じる。先月27日に実施されたドイツの旧東独テュ―リンゲン州議会選では、「極左」(左翼党)と「極右」(「ドイツのための選択肢」=AfD)政党が躍進したが、それを象徴的に示唆している。「右」と「左」に関係なく、社会が忍耐力を失い、極端な方向に走りやすくなってきている。

「大紀元」によると、日本でも「アンティファ」が活動していると警告している。「立憲民主党・杉並区議会議員のひわき岳氏は10月19日、ツイッターで、東京都新宿で行われた反与党政権デモの様子を撮影した動画を掲載。動画には、アンティファの旗が翻る様子が映っている。また、 10月26日、東京渋谷でも、アンティファの旗を掲げた左翼組織がデモを行った」、「8月、愛知県のあいちトリエンナーレの一部展示『表現の不自由展・その後』が一時中断された件では、アンティファ名古屋支部は、展示の再開を要求する団体に主張の場を提供した」というのだ。

冷戦は終焉し、世界を一時席巻した共産主義国は大きく後退した。しかし、資本主義国の民主世界が腐敗し、その精神的バックボーンを失ってきたのを尻目に、欧米社会で消滅したと思われてきた共産主義が蘇ってきた。アンティファは共産主義陣営の前衛部隊だ。

第2次冷戦時代は既に始まっている。第1次冷戦で敗戦した共産主義者と支持者は資本主義社会の奥深くまで潜入し、資本主義社会を今度こそ抹殺するためにその牙を研いでいるのだ。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年11月7日の記事に一部加筆。