筆者は自衛隊は「違憲」という立場だ。しかし、憲法9条の改正は困難なのが現実だ。これが9条改憲の際の大きな問題だ。まず、自衛隊は違憲であることを、9条の条文を検討しながら見て行きたい。
憲法9条の第1項を1928年の「不戦条約」の焼き直しなので、不戦条約が自衛権を認めている以上、9条も個別的自衛権を認めているという意見がある。しかし、「不戦条約」が締結国相互にのみその法的効力が及ぶのに対して憲法9条はそのような制約がない。
そして、「不戦条約」が「国家の政策の手段としての戦争」、すなわち、事前の計画とそれに基づく事前動員と先制攻撃を要件とする侵略戦争を放棄することを宣言しているのに対して、憲法9条は国権の発動たる戦争、すなわち、国家主権の発動である戦争、つまり自衛権の行使たる自衛戦争を含むすべての戦争を放棄している。
したがって、第2項の武力の放棄は、「前項の目的を達成するために」という語句を挿入したいわゆる「芦田修正」の様に、「侵略戦争」には該当して自衛戦争は該当しないということは成り立たない。そして、「国の交戦権は、これを認めない」のならば、自衛権の行使も戦争行為であるので、すべてに戦争が否定されていると解するべきだと考える。
日本は自存自衛の名のもとに戦争を行った、連合国はその行為を侵略戦争と断じた、本来なら認められる自衛権さえ否定されたのは、そこに理由があると、私は考える。
もし、日本が自衛権の行使だけでなく、国連PKOなどの国際貢献を果たそうとするなら、憲法9条を改正する必要がある。
しかし、現在、国民世論は9条改正に根強い反対の動きが多い。最近の例をあげると、7月17日の東京新聞によると、東京都内の有権者1554人の調査で、49.7%の高率で9条改憲に反対している。
これは、今日最近の風潮ではないと考えられる。昭和21年(1946年)11月3日の「日本国憲法記念式典」の勅語で、昭和天皇は「日本国民は、みずから進んで戦争を放棄し」と仰せられた。
この憲法が「日本国民の総意に基づいて確定」された以上、当時のかなりの日本国民が、戦争放棄を願っていたことに間違いないだろう。
その願いは今でも根強くあるのではないか?
いわば、憲法9条は、単なる法律の文言を超えて、日本国民の至上の総意と化していると、私は考えている。したがって、憲法9条の、改憲、加憲、削除を問わず、改正に国民の合意を得るのは、かなり難しいと考える。
だが、現実に日本を取り巻く国際状況は待ったなしの厳しさを増し、PKOなどの国際貢献の必要性も迫られている故、自衛隊の国軍化は焦眉の課題である。
私は提案したい。憲法9条を時限立法で、国会の議決によって効力を停止する。
その間、日本軍は、憲法9条の制約に縛られず、個別的自衛権も集団的自衛権も行使できる、国連憲章に従う軍隊として活動する。
法律の期限が来たら、主に二つのやり方で賛否を問う。
A.期限が到来したら多数決で時限立法の存続を問う。
B.期限が到来したら、1度法案を廃案にして
法案を再提出して、国会において審議して可否を問う。
私はAとBを組み合わせるべきだと考える。
理由はAだけだと法案の可決が続いた場合、半永久的に続く事になり、事実上の改憲になる。また、Bのみだと長期的な派兵計画に齟齬をきたす可能性があると考えるからだ。
この案は、単に現実の困難を避けるという意味のみでなく、従来の文民統制、すなわち国会の議決を通じた財政上の統制に加えて、国会の議決を通じた軍の存在の是非を問うことを通じて統制を図る試みでもある。
この提案は、欠点があるかもしれないが検討する価値があると、私は信じる。
吉岡 研一 ホテル勤務 フロント業務
大学卒業後、司法書士事務所、警備員などの勤務を経て現職。