11月7日、政府復興推進委員会に対して、2021年度以降の政府の復興方針が提出され、復興庁を10年延長するといった内容が盛り込まれました。次がその全文です。
「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針(骨子案)
私も関わった復興総括ワーキンググループの提言をベースとして、今後の施策方針がまとめられています。ポイントを3つ紹介します。
1. 岩手・宮城は、ソフト事業中心に5年間で。
「これまでの復興施策の総括、過去の大規模災害の例等を踏 まえ、復興・創生期間後5年間において取組を着実に実施することにより、 復興事業がその役割を全うすることを目指す」(p11)
道路等のハード事業は原則終わります。一方で被災者の心のケア等の事業は継続します。議論を呼んだのは「5年間」という表現です。こちらは、岩手と宮城の知事は反発し、田中復興大臣もその後に柔軟にする姿勢をみせています。
・達増知事 支援期間5年に反発 復興庁設置延長で(岩手日報)
・津波被災地支援、事業ごと柔軟に 田中復興相「5年で総仕上げの状況目指す」 | 河北新報オンラインニュース
最終的な方針案は幅をもたせた表現になりそうですが、多くの事業は5年で収束に向かうと考えられ、岩手・宮城の自治体も2025年度というタイミングを目指して各種事業に区切りをつけていくことになると思われます。
2. 福島は、引き続き国が10年間リード
原子力災害被災地域においては、本格的な復興・再生には中長期的な対応 が必要であり、復興・創生期間後も引き続き国が前面に立って取り組む。こ うした状況に鑑み、当面 10 年間、本格的な復興・再生に向けた取組を行う。(p12)
一方、福島の復興は国が10年間全面に立つと明言しています。
まずは廃炉や汚染水対策。ついで除去土壌の最終処分への取り組み。そして原発周辺地区への帰還や移住促進、産業集積などが行われていくことになります。
除染作業によってうまれた汚染土は、2045年3月までに福島県外の最終処分所に運び出すことになっています。その意味では、復興庁が終わる2030年頃までには、方針をまとめることを示したことになります。この課題については、引き続き社会全体として注目していく必要があります。
また双葉町・大熊町の復興はようやくスタートラインに立った段階です。今後町並みを整備し、帰還されたり新たに町に入る方々が落ち着くまでを、これからの10年間で進めていくことになります。
3. 復興大臣は維持するとともに、岩手・宮城復興局は被災沿岸に設置
「復興庁の設置期間を 10 年間延長。復興庁は、引き続き内閣直属の組織とし、内閣総理大臣を主任の大臣にあて、復興大臣を置くとともに、復興事業 予算の一括要求や地方公共団体からの要望等へのワンストップ対応など、現行の総合調整機能を維持」(p16)
復興庁は10年延長され、復興大臣も置かれ続きます。加えて、出先機関である復興局のうち、岩手と宮城は沿岸に置かれることになりました。
岩手・宮城が5年と区切られた反発はあったものの、概ね地元行政からは評価されています。例えば気仙沼の菅原市長は次のようにツイートしています。
昨日発表された16頁に亘るR3年度以降の復興の基本方針、復興庁の10年延長、津波被災地の5年事業継続を始め、要望が概ね反映されており感謝しています。また、宮城、岩手は復興局を県庁所在地から沿岸部に移動させるとのこと。被災当初にあった話が実現することに。現場主義の徹底を望みます。 pic.twitter.com/xgSd24qZHl
— 菅原茂(気仙沼市長) (@goahead_shigeru) 2019年11月8日
私の意見もおおよそ同じです。岩手・宮城もインフラ復興は目処が立ちましたが、その後の被災者再建や事業者再建にはもう少し時間がかかります。まして福島、とりわけ双葉町や大熊町の復興はこれから。10年でもギリギリでしょう。
一方、今後は事業に対しての説明責任が益々求められます。復興事業にかかわる現地関係者、支援関係者ともに、はたして復興への取り組みにむけてインパクトを生み出しているのか、明らかにしていく責任があります。
編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2019年11月9日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。