続「ひろトリ」報告:広島県は愛知県の轍を踏むのか?

椋木 太一

プレイベントのパンフレット(筆者撮影)

前回記事「津田大介氏の姿も…「ひろトリ」プレイベントに行ってきた」では、広島県尾道市の離島・百島(ももしま)で開催された現代アート展「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」(「ひろトリ」)のプレイベントの一つである「百代の過客」を訪れての感想を綴りました。

問題は表現の自由ではない

広島県などの行政側がどうするべきか、本論を述べる前に念のため申し上げておきますが、「あいちトリエンナーレ」(「あいトリ」)も「ひろトリ」も、左派が主張しているような「表現の自由の問題」ではないと思っています。

何度も繰り返しますが、自分たちの主義主張を詰め込んだ<作品>を展示したいのであれば、自費で思う存分、観てもらえばいいのです。それは止めしませんし、止めようとしたら、それこそ「表現の自由」に抵触するかもしれません。

昭和天皇、ひいては、日本国民の尊厳を傷つけるようなモノで、しかも公金を使って、自分たちの政治的なメッセージを発信しようとするから、多くの納税者の賛同を得られないのだと思います。

“反日プロパガンダ”と認めたに等しい反応

先の対話企画において、象徴的なやりとりがありました。登壇者の一人は、プロパガンダが否かの判断は、「展示全体を見て判断してもらいたい」と述べていました。百島では、天皇制(皇室制度)に反対する勢力のチラシが置かれたり、反政府的なデモ隊と警官隊が衝突する映像を流したりしています。

一方で、保守系の主張を表すようなものは見当たりません。このようなバランスを欠いた展示方法について、観客の一人が「展示全体を見ると、反日プロパガンダにしか見えないが?」と問い、この登壇者は「(プロパガンダが否かの)解釈は個人の自由。(展示物を)プロパガンダというのなら、プロパガンダ」と答えていました。残りの2人は、押し黙ったままでした。

これでは、自ら、一連の展示物が“反日プロパガンダ”だと認めたようなものです。このような状況ですから、到底、公金支出を見過ごすわけにはいかないのです。

筆者が参加した対話企画の告知(※すでに終了:アートベース百島HPより)

現実を直視しますと、一方で、私は左・右の論争に終始していたのでは、「ひろトリ」の課題解決は時間切れになってしまうと危惧しています。「あいトリ」がこじれたのは、県の対応が後手になったり、悪手を選んだりしたことが一因だと思います。

広島県は愛知県を“反面教師”にできるか?

今回の「ひろトリ」も同様で、県や各市がこれまで、これといった反応を示さないままでいることが、停滞を招いていると思います。つまり、「あいトリ」を反面教師として生かし、県がイニシアティブをとっていかなければ、問題は解決していかないと言いたいのです。

「ひろトリ」の開催目的に、広島県東部エリアのブランド力強化、地域経済の活性化があります。また、この地域の近代化の痕跡を発信するとも謳われています。プレイベントと称して、上記のような<作品>を展示したり、昭和天皇について語りあったりすることが、開催目的に結び付くのか、はなはだ疑問でなりません。

日本国内では芸術祭の名のもと、公金を使った反日プロパガンダが潜行しようとしています。広島は、「HIROSHIMA」として、屈指の海外発信力を持つ都市です。日本の国益を守る防波堤として、県には、迅速に適切な判断していただきたい。これは、多くの日本国民、広島県民の切実な思いなのです。

むくぎ(椋木)太一  広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)
1975年、広島市生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務などを経て2006年、読売新聞西部本社に入社。運動部記者時代はソフトバンクホークスを担当し、社会部では福岡市政などを取材した。2018年8月に退職し、2019年4月の広島市議選(安佐南区)で初当選。公式サイトツイッター@mukugi_taichi1