株式取引手数料無料時代のアメリカに思うこと

アメリカの証券会社は10月頃から雪崩を打ったように株式取引手数料を無料化する動きとなり、来年には無料が当たり前の時代がやってきます。日本も一部条件下では無料もありますが、まだまだ手数料は高いな、と思います。

(herval/Flickr:編集部)

herval/Flickr:編集部)

カナダも手数料はまちまちですが、私の場合は一回(片道)9.99ドル(約800円)。これには取引上限額がなく1000万円の取引してもこの金額ですから実質的には株価が1セント上がれば手数料を払っても利益が出ます。では証券会社はどうやって儲けているのかといえば客から預かる運用資産や信用取引の金利とあります。私はカナダからアメリカの全株式市場はアクセスできますが、長期の配当狙いならともかく、ディトレなど短期売買ではあまりやらないようにしています。理由は為替手数料で、これが高く、数%にもなるため、売ってみないといくら儲かるかわからないことすらあるためですが、多くのカナダ人はそれでもアメリカの株式を売買しています。つまり証券会社は儲け代をちゃんと確保しているともいえるのです。

さて、今日は別に株式売買手数料の話をしたいわけではなく、あくまでも例としてこの事例を挙げてみました。多くの皆さんはグーグルの検索、YouTube、スマホの様々なアプリなどを無料で使っているのと思います。自動車に乗るときのナビだって無料で地図が表示されます。かつてはどんなサービスにもお金がかかっていましたが今は気がつかないけれど結構、無料のサービスは多いものなのです。

しかし、グーグル(アルファベット社)にしろアップルにしろ、莫大な利益を得ています。つまり、収益構造が全く違うため、顧客からはお金を取らなくてもどこからから頂戴できる仕組みがあると言えます。

好例はクレジットカードやスマホ決済アプリでお客側は全く費用は掛かりません。クレジットカードの場合、確かにプラチナカードのようになれば年会費が1万円程度かかりますが、様々な特典があふれています。私は基本的にクレジットカードのポイントを航空会社のマイルに転換するのでお金を払って飛行機に乗るのは2回に1回ぐらいです。(とはいっても2万円ぐらいの費用は掛かりますので、完全無料ではありません。)北米のカードにはレンタカーの自賠責保険が入ってるものも多く、レンタカーを借りる際、保険を買わない人も結構います。

一方、商店側はこの対価を払わねばなりません。私どもも複数のカード決済会社と取引があるので用途によって使い分けていますが、仕上がり(最終的に請求される%)費用は2.5%ぐらいになってしまいます。正直高いとは思いますが、日本はもっと高く、平均3%で多い場合は5%を超えるとされます。

この手数料を国ごとに比べると中国が1%未満、アメリカが1~3%、韓国が2%など(日経ビジネスより)で日本の場合はさまざまなインフラがコスト増を招いているようです。ちなみに中国でスマホ決済が普及したのは一つは最高紙幣が100元(1600円)で高額紙幣がないこと、もう一つは先進国のような個人のクレジットレーティングがないに等しいからであります。北米でも一般に使えるという意味では20ドル札がせいぜいで現金は危ない、怪しいし(マネロンの意)、挙句の果てに商店側が売り上げの現金を銀行に預けると一回当たりいくらと手数料を取られるようになりつつあります。現金は持ち運び手数料がかかるから、というわけです。

ビジネスの基盤はどんどん変わってきています。この何十年当たり前だった収益構造が全く変わることは今後、大いにあるはずです。私があり得ると思う一つは商業不動産の賃料。これは何十年後かには無料になると思っています。その代わり大家はテナントがその店から稼いだ収益の2割をもらうといった形になるとみています。となれば信用度が高くないとテナントは収益から払うマージンがとても高くなり、やっていけないということもあり得るでしょう。当然ながら寡占化が進む要因になります。

車の世界では自動車保険が走行距離が少ない人には安くなる仕組みが出てきました。将来一部の趣味の車を除き、十中八九、クルマは所有しないものになりますから、お客さんは走行距離で払うようになるとみています。レンタカーでも今は一日いくらですが、この仕組みは一定の時間枠の中で距離いくらになるのではないでしょうか?

こうやって見ているとビジネスの構造がどんどん変化していくことにドキドキ感すら覚えます。この5~6年、加速度がついた気がしており、相当気を張ってビジネスの先の先を読み込まないと波に乗り切れない時代になってきたと思います。日本はその点でガラパゴス化しやすい構造にあり、アベノミクスではないですが、どうやってこの壁を破るか、大いなる試練なのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月22日の記事より転載させていただきました。