韓国政府は日本政府に対して、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効を「終了するとした通告を”とりあえず”いったん停止する」とNSC(国家安全保障会議)を開いて決定し、日本政府に伝達し、18時にこれを発表した。これにより、23日午前0時に予定されていた協定期限満了による失効は回避された。
日韓両国政府は、水面下で土壇場の協議を続けていると伝えられていた。韓国は日本の対韓輸出規制厳格化に反発して、8月に協定破棄を決定したが、アメリカ政府だけでなく国内の軍部からも強い懸念が出ていた。
そこで、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効を回避する条件として日本の輸出規制厳格化を撤回するよう要求し、日本側は輸出規制は別問題だと主張してきた。
一方、経済産業省も18時から記者会見を開き、韓国がWTOへの提訴を「いったん」中断するとしたことも踏まえ、韓国側に問題点につき運用改善の動きが見られると判断したと表明。とりあえず、扱いの変更はしないが、今後、これからの協議を踏まえて措置を見直すことを示唆した。
いちおう、日本としては、「何も譲らなかった」と言い得るラインを維持できたので、80%の勝利といったところである。
ただし、そもそも、徴用工問題については、日韓基本条約の根底を揺るがすものであり、たとえば、対韓請求権の蒸し返し、在日韓国人の特別永住者としての地位を見直すなどをもって対処することを予告するなどで対抗すべきところ、制裁なのか制裁でないのか曖昧な貿易管理の強化を経済産業省が持ち出したことで、問題が錯綜し、それが軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に波及したようにも見える。
いうまでもなく、韓国の輸出管理には問題も多く、この輸出管理の厳格化が不当案分けでないが、これは二の矢、三の矢として持ち出すべきだったと私は思う。問題を分かりにくくし、アメリカなどにも、誤解を与えたような指摘もありうる。
いずれにしても、本件は徴用工問題から発した日韓基本条約を、ともすれば反故にしかねない韓国へどう対処するかという問題の、番外編に過ぎない。『ありがとう、「反日国家」韓国 – 文在寅は〝最高の大統領〟である! 』(ワニブックス)でも指摘した問題の本筋は何も解決していないのだから、これで日韓の雪解けなどということにならないように、しっかり対処することを政府には望みたい。
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授