先日、ゲームと人工知能(AI)に関する講演会に出席し、ゲーム産業では多様な分野でAIが活用されていることを知った。
ゲーム産業やシミュレーション工学に資する調査研究等を支援するのが主目的の、科学技術融合振興財団は創立25周年を迎え講演会が開催された。テーマはゲームとAI。
ゲームの開発過程でAIが利用されている。リアルな背景を生成するというのがその一例。山岳地帯、田園など場面に合わせて、その場に合う樹木を、その場に合わせた量で生やすことができる。太陽の位置や天候などに対応して、情景を明るくしたり暗くしたり、雨で濡らしたり乾燥させたりできる。
対戦型ゲームでは、開発過程でキャラクター同士の戦いを実験できる。結果によってキャラクターの強さを調整するなど、設計陣はゲームを楽しくするためにAIシミュレーションを利用している。
「太鼓の達人」の場合、初心者は「ドン、ドン、ドン」とゆっくり叩き、同じ曲を上級者は「ドンカッ、ドンカッ、ドンカッ」と速く叩く。この叩き方の指示を、過去曲に学んでAIが自動生成するシステムが試みられているそうだ、
購入者が対戦している相手が実はAIというのも当たり前。将棋ゲームならAIが棋力を瞬時に判断して手を打ち、購入者を楽しませる。確かに、勝ちっ放しも負けっぱなしも面白くない。勝ったり負けたりの棋力自動調整は購入者の希望に沿う。
どのような購入者が追加課金するかAIが分析して、最も買いそうな購入者に向かって、その人に合わせた言葉遣いで広告を打つというように、マーケティング目的でもAIは利用されている。大勝利の後など高い評価をしそうな時に、購入者に評価を依頼するということもあるそうだ。
藤井七段が将棋ゲームで棋力を育てたという話がある。AIが人間を強くし、強くなった人間がAIをもっと強くする。こうして今まで到達できなかった高みまで登り、超人類へと成長していくのが理想だと、講演者は口をそろえた。そこには「シンギュラリティ」を警戒する様子はない。
最近では、拡張現実(AR)技術を駆使して、現実の情景の中にゲームキャラクターを置くというのも普通になっている。リアルとバーチャルの境界もこうして曖昧になっていく。
超現実の世界で超人類がAIとゲームを楽しむ日は近い。
山田 肇