GSOMIA失効期限直前に、韓国政府が「条件付き期限延長」なる措置を日本に通告してきました。韓国はこの選択によって、GSOMIA破棄の場合に米国が警告した【パーフェクト・ストーム=破滅的な経済危機 perfect storm economic crisis】の来襲を回避したものと考えられます。
周知のとおり、韓国政府の目論見は、GSOMIAを破棄すると宣言することで米国政府を困らせ、輸出管理の事案で日本政府に譲歩を求めさせることでした。実際、2015年の慰安婦合意では、韓国政府は慰安婦問題をGSOMIA締結の障害と位置付け、GSOMIA締結を進める米国政府から日本政府に圧力をかけさせることで、日本政府からの謝罪と賠償を勝ちとりました。今回の韓国政府の行動は明らかにこの成功体験を再現させようとするものでした。
しかしながら、韓国政府は米国政府の外交戦略を読み間違えました。米国政府が苦労して日本政府を説得して成立させた「最終的かつ不可逆的」な慰安婦合意をいとも簡単に一方的に破棄した文在寅政権は、慰安婦合意と交換条件で成立させたGSOMIAを再び米国政府を動かすカードとして使ったのです。これにはさすがの米国政府もキレました。
今回は一方的に韓国政府に圧力を加え、パーフェクト・ストームを暗示したのです。さすがに韓国政府は恐怖を感じて【チキンゲーム chicken】から降りたものと考えられます。
ストーキング社会
さて、今回の事案で極めて異常なのは、韓国政府が、韓国国民の人命と財産と経済活動のリスクを増大するGSOMIA破棄を交渉カードとして使って【反日 anti-Japan】を展開していたことです。彼らにとって、日本に【嫌がらせ=ハラスメント harassment】をする反日行動は、GSOMIA失効期限直前まで、自らの生活よりも優先されてきました。つまり、韓国社会にとって反日は、国の存亡と同じくらい重要な地位を占めるのです。
韓国社会の反日行動のパターンは、長期にわたり日本の一挙手一投足をしつこく常に監視して、少しでも隙があればハラスメントを加えるというものです。
例えば、竹島問題・靖国問題・歴史教科書問題・慰安婦問題・徴用工問題・日本海呼称問題・旭日旗問題・原発処理水問題などに関連する日本の行動・発言を隅々まで監視し、あら探しした上で韓国のマスメディアを通して言いがかりをつけるというのが日常茶飯事となっています。
このような異様な日常行為は一般に【ストーキング stalking】と呼ばれます。また、ストーキング行為を行う加害者は【ストーカー stalker】と呼ばれます。韓国社会は、その行動様式からすれば、“ストーキング社会”である可能性が高いのです。
憎悪型ストーキング
韓国社会のストーキングに類する反日行動の動機は「日本攻撃依存=反日依存」にあり、それは「韓国社会特有のメンタリティ」に根差したものです。ここでは、P.E.ミューレン医師 Dr.Paul E. Mullen の研究成果を基に、当該行為の臨床心理学的特徴を分析したいと思います。
ストーキングに関する世界的権威であるミューレン医師は、その著書”Stalkers and their victims”(邦題:ストーカーの心理)で広くリタラチャー・サーヴェイを行った上で、ストーカーの行動の類型を次のように示しています。
【拒絶型 rejected stalkers】親密な関係を一方的に終了させた相手に返礼する
【親密追求型 intimacy seeking stalkers】孤独の解消のために関係を求める
【憎悪型 resentful stalkers】相手の過去の行為に憎悪で応酬する
【無資格求愛型 incompetent suitors】愛情ではなく短期的関係を求める
【略奪型 predatory stalkers】満足や支配といった欲望を追及する
このうち、韓国社会のストーキングに類する反日行動は明らかに「憎悪型」にあたります。憎悪型ストーカーの臨床的な特徴としてミューレン医師は次の点を挙げています。
(a)被害者を悩ませたいとする欲望がハラスメントの動機である
(b)ハラスメントは自分を怒らせた相手に対する返礼であると考える
(c)自分は復讐者ではなく被害者であると認識している
(d)ハラスメントの標的は自身より弱い相手ではなく強い相手である
(e)長期にわたってしつこく計算づくのハラスメントを続ける
今回の韓国社会のストーキングに類する反日行動は、下記に示すように上記項目のすべてに見事なまでに合致します。
(a)韓国社会のハラスメントの動機は「自己防衛」ではなく「捨て身の攻撃」です。日本の輸出管理については、適正に申請すれば何の損益も発生しないにも拘わらず、大問題化して日本製品不買運動を展開しました。
(b)GSOMIA破棄については、「輸出規制」で韓国社会を怒らせた日本に対する返礼であると考えています。そもそも「輸出管理」は韓国企業の不正を問題視したものであり、韓国政府の不正を疑ったものではありません。それにも拘わらず韓国社会は政府間の安全保障の問題と混同して日本を罵りました。
(c)韓国社会は日本政府から不当な「輸出規制」をされた被害者であると考えています。
(d)標的である日本は韓国よりも強大な国です
(e)韓国社会は常に日本の行動を監視して抗議を続けています。
ミューレン医師によれば、【憎悪 resentiment】とは、【ルサンチマン ressentiment】が語源であり、即座に仕返しすることを抑制し、無礼と感じるものに触発されて記憶された不面目・無力感に立ち返るものです。相手から自分が不当に扱われたと考える強迫的かつ永続的な感情が、延々と続く侮辱のヴァリエイションへと分化・深化して行きます。
憎悪型ストーカーは、自らを無辜の民と見なし、相手へのハラスメント行為を100%正しいものと認識しています。彼らは、自分を正当化する自己実現のためにハラスメント行為を行っているのです。憎悪型ストーカーは計算高く、自分のリスクを最小のまま最大限の苦痛をターゲットに与えようとします。
ミューレン医師は、憎悪型ストーカーと【モンスター・クレイマー chronic complainer】との共通点も指摘しています。彼らは、病的で異常なまでにしつこい要求過剰タイプであり、不平を言い訳にして自己正当化しながらハラスメントを行うとしています。このため他者の言うことには耳を貸しません。韓国社会が自らの反日行動に関して日本はもとより他国の言うことに耳を貸さないのは周知の事実です。
ストーキング対策
ミューレン医師はストーキングから身を守る対策についても多様な提言を行っています。ここでは、韓国社会の日本に対するストーキングに類する行為に有効と考えられる項目を紹介したいと思います。
(1)ストーカーになりかねない相手を見極める
韓国社会の反日行動が憎悪型ストーキング行為の典型的な特徴とよく一致する以上、日本社会は韓国社会の反日行動をストーキングである可能性を考慮しながら対処する必要があります。
(2)ストーカーとの付き合いを遠ざける、あるいはやめる
韓国社会の反日行動がストーキングであるかないかに拘わらず、一部の日本企業が、日本製品不買運動や戦犯企業なるレッテルを貼られる国籍差別を受けている以上、韓国の投資先としての政治リスクは極めて高いと言えます。
例えば、大衆を消費者として相手にするアサヒビールやユニクロは日本製品不買運動の象徴として見るも無残な国籍差別を受けました。投資にあたってはこのような政治リスクを十分に勘案して自己責任で行うことが重要です。今回の事案で優遇措置の撤廃が極めて困難であることを認識した以上、日本政府は韓国に対して政治的・経済的優遇措置を与えることに慎重になるべきです。
(3)ストーキングされていることを第3者に伝える
日本政府は、類似した価値観を持つ友好国である米国政府に対して、韓国社会の反日行動に関わる政府情報を逐次伝えて共有すべきであると考えます。韓国社会が理解に苦しむ異常な行動を頻発している以上、日米のインド太平洋地域における軍事戦略にとっても、韓国社会を分析することは極めて重要であると言えます。
加えて、日本政府は、韓国社会が日本の国際的立場を貶める目的で行っている根も葉もない風評流布(過去には歴史教科書問題・慰安婦問題、最近では徴用工問題・旭日旗問題・レーダー照射問題・原発処理水問題)に対して逐次反論を行うことが重要です。通常の政府会見やウェブサイトを利用した反論は勿論のこと、国際紙への反論記事の投稿は極めて重要です。
(4)ストーキングの証拠資料を保存する
韓国社会はしばしば虚偽の事実を発表して日本を貶めます(例えば、レーダー照射問題)。また、実際に発言したことを発言していないと偽ることもしばしばです(例えば、文喜相国会議長の「天皇は戦犯の息子」発言)。日本政府は可能な限り事実を記録して長期間保存することが重要です。
(5)支援機関(国際機関)と接触する
韓国は日本の国際的な立場を貶める目的で、不合理な言いがかりをつけてしばしば国際機関に働きかけます(例えば、輸出管理問題におけるWTO、旭日旗問題におけるIOC、原発処理水問題におけるIAEA)。これらは本来、ストーキングの被害者が接触すべき機関です。日本政府は論理と証拠をもって逐次逆提訴して法的に争う必要があります。
(6)ストーカーとの接触を避ける
韓国の首脳と密室において1対1の会談をすることは可能な限り回避すべきです。最近では会談を開くたびに日本政府とは大きく異なる韓国政府の見解が韓国メディアを通してプロパガンダされ続けています。
大阪のG20でも韓国政府はしつこく会談を迫ってきましたし、ASEAN首脳会議の控室において文在寅大統領は安倍首相を「少し座ってお話しましょう」と呼びかけ、無断撮影すると同時に韓国にとって都合のよいことを韓国メディアを通してプロパガンダしました。
このように韓国による悪質な情報戦術が続いている以上、日本政府は可能な限り証拠が残る文面でやり取りをすることが望まれます。
今回の一連の日韓対立事案において日本政府は、完全ではないものの、上記のような対応を韓国政府に対して行っていたものと考えます。このことが韓国政府をGSOMIA撤回の期限付き延長に至らしめた重要な素因になったものと考えられます。
なお、ミューレン医師によれば、憎悪型ストーカーは法的制裁に直面すると、ストーキングから身を引く例も多く、法的制裁の有効度合いはハラスメントのパターンがどれだけ確信的であるかにかかっているという見解を示しています。米国政府が遵法的なへヴィ―な制裁を暗示したことが、韓国政府の意思決定に重大な誘因として影響を与えたことは疑いの余地もありません。
破綻したストーキング
現代を生きるほぼすべての日本国民は、韓国に対して何の戦争危害も加えていないにも拘わらず、韓国政府と日韓マスメディアの論調を無批判に迎合し、不合理な償いを続けてきました。
そして今もなお、日本から何の戦争危害を受けたわけではない多くの韓国国民と韓国政府から歴史問題を根拠にして謝罪と賠償を要求されるという理不尽な国籍差別を受け続けています。この国籍差別は人権に対する重大な侵害行為に他なりません。
今回の一連の日韓対立で顕在化した韓国社会の日本に対する憎しみに溢れる行動は、多くの日本国民をドン引きさせました。終始冷静だった日本国民の眼には、感情を露わにストーキングに類する反日行動に及ぶ韓国社会の姿が異様に映ったものと推察します。
韓国政府の行動をほぼ見切っていた安倍政権は、法の支配の原則の下に、韓国政府がいくら駄々をこねても精緻に設計された支配戦略を全うしました。これは今後の日本の対韓外交戦略の基本になるものと考えます。
さらに、以前から【韓国疲労症 Korea fatigue】を発症していた米国は、今回の件で韓国社会の異常な執着心を目の当たりにしたものと考えられます。時間切れギリギリまで1%を信じてけっして譲る姿勢を見せない狡猾な韓国政府に対して、より強い警戒感を持ったことは想像に難くありません。
今後は韓国社会のストーキングに類する反日行動を含め、韓国社会のメンタリティの研究に多くの関心を寄せるものと考えられます。多くの貴重な人命を朝鮮戦争のために失っている米国に対して、韓国が同盟のキーストーンを交渉の材料に使ったことを米国はけっして忘れないはずです
残念ながら、韓国社会のストーキングに類する反日行動は、過去に成功体験を持つ【オペラント行動 operant behavior】であり、簡単に終わることはないと考えられます。重要なのは、日本を悩ませることこそが韓国の目的であること、そして不合理な成功体験を今後けっして与えないことこそが唯一のソル―ションであることを日本社会が認識することです。
編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2019年11月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。