温泉とスパ:日本と海外の違いをビジネス視点で考察

岡本 裕明

これからどんなビジネスが伸びるのか、常に存在するテーマです。そんな中で最近、温泉とスパの将来について面白い切り口があるのかもしれないと思うようになってきました。

日本では非日常とリラックスを楽しむとすれば温泉というイメージがあります。ところが海外になるとこの温泉は国や地域によりますが、そう簡単に出てくるものではありません。

もう一つは日本式の風呂は日本独特のものであり、海外の温浴は水着を着て入る混浴が普通です。では海外ではどうやって非日常とリラックスを楽しむことができるのでしょうか?

日本式の温泉(himawariin/写真AC=編集部引用)

スパという言葉は日本でもごく普通に使われていますが、どちらかというと女性が行くエステ的なトリートメントをしてくれるところというイメージが強いと思います。男性が興味を示すような感じにはなりにくいでしょう。

ところが海外のスパは療養とリラックスが主眼ですので男性客は思った以上に多いのです。

実は私どもの商業施設にタイ式スパを経営するテナントさんがいます。とても繁盛していて、客足が絶えないのですが、彼ら曰く、だいたい半数は男性客だというのです。これは驚きです。いかにスパというイメージが日本と海外で相違しているかの一例だと思います。

スパは街中の店舗型もありますが、近年はリゾート地に本格的スパを経営するチェーンも増えてきています。屋外に温浴施設を作り、自然の景色を借景にリラックスすることを主眼としており、おおむね入場料は1万円ぐらいは覚悟しなくてはいけないようです。日本の健康ランドの4-5倍だろうと思います。

カナダのクーテネイ国立公園にあるスパ施設(flickrより編集部引用)

健康ランドがどちらかというとエンタテイメント系としての存在意識が強いのに対して海外のスパはアダルトオンリー、日帰りでのリゾートと非日常感を満喫するというスタンスである点が最大の相違点です。ディズニーランドやUSJはリゾートではなくエンタテイメント施設、でも知床や富士五湖はリゾートになりうるところです。リゾートとは基本的に自然と接することが主眼です。

一方、リトリート(Retreat)はリゾートで満喫するほど時間はないけれどちょっと気分転換するという場合に使う言葉でスパなどはリトリートの手段としてお手軽感も含めて人気があるのです。多分、日本にはまだなかなか浸透していないコンセプトです。

バンクーバーから車で1時間ほどのところのゴルフ場に原泉がでて、そこで日本式温泉旅館の開発準備が進んでいます。残念ながら主導しているのはそのゴルフ場を所有する中国系のカナダ不動産事業会社。設計者は日本人でどんなものができるのか、興味津々ですが、部屋の風呂は温泉で日本の内風呂的な感覚で温泉が楽しめそうです。

運営次第ですが、個人的には当たると思います。そしてこちらのことですからそれこそ一泊3-5万円ぐらいは平気でとるのでしょう。食事は併設のレストランでのサービスではないかと想像しています。

現代社会において消費はモノからコト消費というのは日本だけではなく、世界に共通していることですが、ストレス社会も世界共通なのです。だからこそ、週末のリトリートは今後相当高い需要が見込まれると考えられるし、それを提供できる施設があればこれは時代の波に乗れるのではないでしょうか?

では発想を変えてこれを日本に逆輸入したらどうでしょうか?つまり、日本で週末お手軽のリトリートができるような施設を再発見するのです。東京近郊なら1時間も行けば温泉はいくらでもあります。そして最近ではすっかりなじみがなくなった湯河原、日光をはじめ、各地に点在する温泉施設をスパという位置づけに変え、それこそ「大人の週末」を演出するのもアリではないかと思います。

日本の温泉は日本独特のもの、海外で広がるスパは日本では違ったイメージが先行する中でこのギャップを埋め、両方のいいところどりをするというのは今後のビジネスには参考になるのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月24日の記事より転載させていただきました。