「石が流れて木の葉が沈む」。物事には2面性がある。この2つの面を利用すれば、自分に都合の良い時は表に出て、都合の悪い時は裏に引っ込み、まるでメビウスの輪の上をくるくる回るように立ち回ることが可能になる。
しかし、結局は「同じところを回っている」ので成長もないし時間が進まない。会社には必ずこのような人が存在する。
どんなに立ち止まりたくでも時間は過ぎていく。砂時計をひっくり返しても時間は巻き戻せない。無理やり止めると「歪み」が生じる。その歪みは自分自身に返ってくる。整合性の取れない方針やこだわりに執着せず、時間を進めるべきである。本日は『ホワイト企業創生論 〜陽気発する処、金石も亦透る〜』山﨑大剛 (著)を紹介したい。
著者の山﨑さんは、店長、課長、部長などの「長」のつく役職の「役割」について次のように質問する。「長」のつく役職の人は、サッカーで例えると、次のどのポジションが近いと思うか?10秒考えてほしい。
A.フォワード
B.キーパー
C.ボランチ
おそらく様々な意見がある。「先陣を切って点を取りにいくべきだからフォワードが正解だ」「守護神としてゴールを守るのが仕事だからキーパーだ」「みんなに指令を出して指揮するボランチの立場にいるべき」。ところが全て不正解である。では「長」のボジションはどこなのか、その答えは「監督」である。
(山崎さん)「監督のいる場所はどこでしょうか?監督はベンチにいます。フィールドに出て試合をすることはありません。ベンチにいて、基本的には選手が思い通りに動くのを黙って見ています。ロを出すのは、 練習したことがうまくできていない時や、作戦を変更する時にサインを出すだけです。監督は試合をしません」
山崎さんは、組織構成員の役割をサッカーを通じて解説しているがこの描写は興味深い。戦略を遂行するのは人であり、内容はシンプルなほうがいいということになるのだろう。それには、上に立つリーダーの使命が大切になる。そのうえで、組織全体が進むべき方向や自分の役割をしっかり認識させることが必要である。
企業経営でも能力の高い人は権限をフルに行使して成果をあげる。そのため適切な権限委譲が必要になる。まれに、監督自らがフィールドに立ち率先している組織がある。見た目にはバイタリティ溢れる光景だが、これでは人は成長しない。会社は人と組織の相互作用によって成長する。人によって組織の方向性や戦略遂行能力は決まるのである。
[本書の評価]★★★(72点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※2019年に紹介した書籍一覧
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。