キムギドグ監督の『春夏秋冬そして春』(2003年ドイツ/韓国)を観ました。
舞台は、山奥の湖に浮かぶ小さなお寺。
登場人物は全編で10人ほど。セリフもほとんどありません。
ゆっくりした映像ですが、波乱万丈の人生。
そして、とにかく映像が美しい。水、魚、自然・・・。
春:老僧と子供の僧。
子供の僧が魚、蛙、蛇に石を括り付けて遊んでいるのを見た老僧は、翌朝、子供の僧にも大きな石を背負わせ、魚、蛙、蛇を探しに行かせるが、魚と蛇は既に死んでいた。
「お前は、この石を心に背負って生きなさい。」という老僧のセリフが印象的。
夏:老僧と青年になった僧。
病気の療養に来た女性と激しく恋愛。
「欲望は執着を生み、執着は殺意に変わるだろう。」という老僧の言葉を振り切って、青年層は女性と寺を出る。
秋:老僧と成人になった僧。
老僧の予言どおり、成人になった僧は、妻を殺し、逃げてくる。追ってきた警察と一緒に、夜通し写経をするシーン、そして、捕まった僧を見送り、老僧が焼身自殺するシーンは圧巻。
冬:中年になった僧と赤子。
刑期を終えて、寺に戻ってくる。そこに、一人の母親が赤子を連れて寺に。寺に赤子を預けて帰る途中に、冬の湖に落ちて亡くなってしまう。中年になった僧は、石を背負って、山を登り、母を弔う。
そして春:老僧と子供の僧。
の短いシーンで終わる。
全編を通じて、仏教、輪廻ということを考えざるを得ない。
ひょっとすると、「欲望は執着を生み、執着は殺意に変わるだろう。」と言った老僧も、過去に同じような経験があったのかもしれない。次の世代でも止められなかったことに対して焼身自殺したのかもしれない。
とても印象に残る映画でした。
<井上貴至 プロフィール>
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2019年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。