エリザベス・ウォーレン議員の支持率は、足元で失速しています。10月8日に民主党大統領候補1位のジョー・バイデン前副大統領と26.4%でトップに並んだ後、遂に10月1日に動脈閉栓の手術を受けたサンダース候補に抜かれてしまいました。
ウォーレン氏の支持率、10月以降にウォール街を中心にネガキャンを張られたせいか失速。
ウォーレン氏と言えば、サンダース候補と共に急進左派=プログレッシブの急先鋒ですが、その大胆な選挙公約と一線を画し、語り口調は耳に心地よいことで知られています。オクラホマ州出身とあって南部訛りを含む語り口調が、穏やかな調べとなっているに違いありません。
そのウォーレン氏、10月に支持率が急伸した時期、好機を逃さんとばかりにCNNのインタビューに応じました。しかも、選挙戦開始以来、初めて夫婦そろっての登場です。
インタビュー早々、夫であるハーバード大学のブルース・マン教授が2人の出会いを赤裸々に明かしてくれます。なんとマン教授、フロリダ州の学会で「一目惚れした」んですって。「彼女は数人と談笑していたんだ。25ヤード(約23m)離れた場所からでもすぐ分かる、彼女は輝いていたよ」と、目を細める姿は変わらぬ妻への愛を感じさせます。
当時、ウォーレン氏が最初の夫と別居中だったと、込み入った話をつまびらかに話すのはアメリカ人らしいですね。ちなみにウォーレン氏が夫となるマン氏に恋に落ちるには、数日掛かったそうです。
さて、CNNで人間的な魅力を存分にアピールしたウォーレン氏、政策はやっぱり保守派の肝を冷やす急進左派=プログレッシブっぷりが際立ちます。
・富裕税
→純資産5,000万ドル以上の所得上位7.5万世帯に対し課税、純資産5,000万ドル~10億ドルは5000万ドルを1ドル超える部分に年率2%、10億ドル以上は1ドル超えの部分に年率3%
・巨大IT企業の解体
→フェイスブック、グーグル、アマゾンなどを解体し、競争を促進
・自社株規制
→こちらをご参照
・2050年までにCO2排出ゼロ
→10年間に3兆ドル投じ、再生可能エネルギーへの転換を目指す
この中で、金融市場が戦々恐々としているのが巨大IT企業の解体と自社株買い規制ですよね。ブッシュ(子)政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、現在はハーバード大学教授のマンキュー教授はむしろ、社会的な影響と政策効果をにらみ富裕税に着目しています。
ウォーレン氏は所得格差是正を狙った富裕税の導入により、10年間で2.75兆ドルの歳入を見込みます。同政策は支持者の間で非常に人気が高く、ウォーレン氏のラリーでは、富裕税の2%を指す「2セント!」が合言葉になるほど。社会保障費を200ドル引き上げるための財源とあって、支持者の声が上ずるのは想像に難くありません。
しかし、富裕税には抜け穴がございます。仮に夫婦の総資産が1億ドル超ならば富裕税納税額は100万ドルと試算されますが、離婚して資産を分割すれば対象外となりますよね?マンキュー氏はここを突き、富裕税導入では税制対策として離婚する夫婦が急増するのではと予想します。
億万長者は、富裕税導入なら離婚以外の税制の抜け穴を探す上で大枚を払うことでしょうし、格差是正の糸口となるかは微妙な情勢です。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。