最近の共産党による「野党連合政権」提唱
最近、日本共産党は、自民党安倍政権を打倒するための政権構想として、「野党連合政権」を提唱し、日本維新の会以外の他の野党に「共闘」を呼び掛けている。これに対して、「れいわ新選組」の山本太郎代表はこれに応じ、5%への消費税減税政策等に合意した。社民党も「共闘」には応じるようである。しかし、立憲、国民の両党は、いまだ明確な態度を示していない。
ところで、日本共産党は2015年9月には、「戦争法廃止」「立憲主義回復」のスローガンを掲げ、他の野党や国民に向けて「国民連合政府」を提唱している。しかし、2016年11月の同党中央委員会総会では、「安倍政権打倒」のスローガンを掲げ、今度は「野党連合政権」を提唱した。共産党は1973年11月には「民主連合政府」を提唱している(注1)。
戦後「暴力革命路線」の過去がある共産党
日本共産党は、これまでも党の政治路線を、その時々の政治情勢によって、しばしば急激に変転させてきた。古くは1945年の敗戦後の一時期は、アメリカ占領軍を「解放軍」と規定し、「愛される共産党」のスローガンを掲げ、主として国会を通じて人民政権の樹立を目指す「占領下平和革命路線」をとっていた(注2)。
ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発し、コミンフォルム(「共産党・労働者党情報局」)から「平和革命路線」の批判を受けるや、今度は一転して朝鮮戦争への後方攪乱を企て、数年間にも及んだ、火炎瓶闘争、交番襲撃、警察官へのテロ行為、山村工作隊、中核自衛隊などの「暴力革命路線」に急激に転換した(注3)。
今でも「敵の出方論」を放棄しない共産党
このため、国民の支持を失い、その後の国政選挙で惨敗すると、1955年の共産党第6回全国協議会(六全協)では、「極左冒険主義」を自己批判し、選挙闘争を中心とする「平和革命路線」に再び転換した(注4)。
しかし、日本共産党は、「革命が平和的か暴力的かは敵の出方による」という、いわゆる「敵の出方論」を今でも放棄していない(注5、注6)。なぜなら、共産党が党規約2条で理論的基礎とするマルクス・レーニン主義(「科学的社会主義」)の核心は、「暴力革命」による「プロレタリアート独裁」(「共産党一党独裁」)の実現だからである(注7、注8、注9、注10)。
党の政治路線をしばしば急激に変転させる共産党
日本共産党は、今でこそ「野党連合政権」を提唱しているが、「野党共闘」に基づき一旦政権を取れば、「社会主義・共産主義革命路線」(注11)に一変する可能性は排除できない。
なぜなら、前記の通り、共産党は、党の政治路線を、その時々の政治情勢によって、しばしば急激に変転させてきた党の体質と歴史があるからである(注12)。
したがって、日本国民は、上記のような共産党の体質と歴史をしっかりと認識しておく必要がある。
日本共産党の本質は「社会主義・共産主義革命」の実現
日本共産党の本質は「社会主義・共産主義革命」の実現であり(注11)、しばしば急激に変転する「政治路線」や「政権構想」などに惑わされてはならない。
日本国民はこのような共産党の本質を直視すべきである(2019年8月30日付け「アゴラ」掲載拙稿「極めて危険な日本共産党提唱の野党連合政権」。2019年9月18日付け掲載拙稿「共産党の本気の共闘は民主連合政府・社会主義日本への道」。2019年10月31日付け掲載拙稿「共産党との共闘は立憲・国民両党にとって自殺行為」参照)。
(注1) 日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年上巻」448頁~451頁1994年新日本出版社
(注2) 向坂逸郎編著「日本共産党論」39頁~40頁1974年社会主義協会
(注3) 兵本達吉著「共産党の黒い履歴書」36頁月刊「WILL」2016年5月特大号「総力大特集・日本共産党の正体」
(注4) 日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年上巻」243頁~244頁1994年新日本出版社
(注5) 宮本顕治著「日本革命の展望」213頁~214頁1966年日本共産党中央委員会機関紙経営局
(注6) 不破哲三著「人民的議会主義」244頁1970年新日本出版社
(注7) マルクス著「資本論」第1巻向坂逸郎訳938頁昭和46年岩波書店
(注8) マルクス・エンゲルス著「共産党宣言」世界思想教養全集11巻45頁、48頁昭和37年河出書房新社
(注9) レーニン著「国家と革命」レーニン全集25巻419頁、499頁1957年大月書店
(注10)スターリン著「レーニン主義の基礎」スターリン全集6巻129頁1980年大月書店
(注11)日本共産党綱領「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」
(注12)立花隆著「日本共産党の研究上巻」19頁~20頁昭和53年講談社
加藤 成一(かとう せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。