決済は金融機能か:フィンテックで再注目

商取引において、代金の決済が貨幣の授受としてなされるのならば、その決済は金融機能ではない。しかし、今どき、個人の小口の取引以外では、貨幣の授受による決済は行われていない。通常は、売り手の銀行口座と買い手の銀行口座との間で、送金等の方法を通じて決済されている。つまり、決済は、多くの場合、金融機関の機能を利用して行われているわけだ。

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決済は、商取引においては必需の機能であり、遠隔地間取引など、昔から貨幣の直接的な授受が困難な状況があったわけだから、為替業のような決済専門の機能分離は早くに成立したのだろう。そして、共に資金を扱うという利便性の見地から、貸金業等の金融機能に統合されていったと思われる。故に、商取引においては、決済は古くから金融機関の機能だったはずである。

さて、決済が金融機関の機能になったからといって、決済の原型が貨幣の授受であり、それが金融機能でないとしたら、決済方法の変更によっても、決済が金融機能でないという本質は不変なのではないか、決済は、金融機関が行う機能ではあっても、そのことから直ちに金融機能だとはいえないのではないか。

つまり、金融機能と金融機関の機能とは、峻別されるべきだということである。理屈上、第一に、金融機能は、金融機関によっても、非金融機関によっても、供給され得るし、現に供給されていること、第二に、金融機関は、金融機能だけでなく、非金融機能も供給し得るし、現に供給していること、このことは改めて確認されなければならない。

商取引等に内包されていた金融機能が独立して、金融機関が成立し、金融機能が金融機関の機能になったからといって、例えば、金融機能を内包した商取引は、現在でも普通に行われており、金融機能は、依然として、金融機関の機能の外に広大に広がっている。

また、決済機能のように、金融機能でないものが独立して、それが金融機関の機能に結合されたからといって、金融機能でないことに変わりがないのならば、金融機関の機能から分離して、再度、独立させることが可能である。これがフィンテックの重要な要素として、現在、真剣に検討されていることである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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