世の動きについていけない!

日経1面トップの見出しに「『課題解決力』収益けん引 SDGs、経営反映6割」とあります。パッとみてすっと理解できる方はどれぐらいいるでしょうか?1-2割いないかもしれません。同じ日の紙面に 「『ビットコイン 何ですの』 大阪の中小にも『身代金攻撃』」という記事もあります。大阪の町工場のパソコンにランサムウェアが侵入し、身代金としてビットコインで数万円相当を要求したので修理するより安いので払おうとしたという話です。ところが、ここにもわからない言葉が出てきます。ランサムウェア、なんだこりゃ?であります。

一事が万事、と言いますが、私は最近、一般の方が世の中の動きについてどれぐらいキャッチアップしているのかかなり疑問視しているのです。全体的にある程度知っているという人は想像以上に少ないと思うのです。そして最近ではそれについていこうとしていた人々も脱落しているように感じています。

ワープロからパソコン、そしてスマホに移行する際、脱落組は必ずいました。それでも人差し指で必死にタイプしていたおじさんたちは女子社員が機関銃のようにパソコンにインプットするのをうらやましく思っていたはずです。今、若い人たちはタイプが打てなくなったと聞きます。スマホ入力になったからです。卒論をスマホで作るという強者までいる時代です。

私はスマホのタイプ入力が遅いのでテキストでやり取りしていると必ず負けて相手にそれ以上のテキストを打ち込まれ、撃沈していました。そこで考えた私の反撃は音声入力。多少、間違いはあるけれどそれを修正してもこれは圧倒的に早く、今度は相手の返事を待つ番になりました。ところでスマホの音声入力、これ、知らない人がかなり多いのではないでしょうか?どんなスマホにもついているのですが、使っている人は少ない気がします。(入力画面にマイクロフォンのマークがありますのでそれを押すと音声入力に変わります。)

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

日本ではQRコードを使ったキャッシュレスが普及し始めていますが、北米ではあまりお見掛けしません。クレジットカードのICチップで約1万円までは端末にタップするだけで暗証番号も押さず支払いが完了するからです。その間、1秒もかかりません。QRは北米でも飛行機に乗るときの搭乗券として使うことがあります。正直面倒くさいと思うのは乗るまでにセキュリティチェックで2度、搭乗口で1度の計3回、その画面を出さねばならないことです。荷物持っているのにいちいちその画面を出さねばならず、案外、普通の紙の搭乗券をプリントアウトした人が多いのに「その気持ち、わかる」と肯いてしまうのです。

世の中は便利さや効率を追求してどんどん変わっていくのですが、いちいちそれについていくこと自体が面倒になってきました。飛行機のエアマイル。私は航空3社のマイルをその時々で集めています。マイルに縛られて航空会社を選ぶと国際線の場合、だいたい損するようになっているからです。(国内線のように価格は一定しておらず、一年で倍半分の変動率があります。)

皆さんのお財布にお金以上に膨らんだのはお店発行のポイントカードではないでしょうか?今はどの店も「ポイントカード、無料ですぐにお作りします」と言われ、ついその気になっているとびっくりするほど貯まるのはポイントではなく、いろいろなカード。今度それをレジで提示するとき、「あれー、どこに行ったかな」と探すのに一苦労ということになります。

仕事をしていると変化を重視し、どんどん新しいものを取り入れようとするのですが、自分の生活となると「キャッチアップじゃなくてのんびりしようよ」という気持ちになる矛盾を感じないわけにはいきません。

多くの方はある方面については強い知識があるけれどある方面は皆目わからないという斑(まだら)感が出てきています。これは人々がコントロールされやすい状態になっているとも言えます。理由はその方面に対する蓄積した知識がなくそのためにマスコミ等で報じられていることをうのみにしやすくなるからです。これは社会への警笛となるかもしれません。その道の専門家が人々を誘導しやすくなるということです。

QRコードの普及は中国の影響でした。北米のようにクレジットのタップが進まないのは盗まれたときのセキュリティもありますが、日本のクレジットカードのICチップ化が世界に比べダントツで遅れていたこともあります。私から見れば中国方式に負けた、ということでしょう。(但し、QRコードそのものは日本が開発したものです。)

世の動きに必死についていくか、あきらめるか、我が道を行くか、どれも一長一短ありそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月4日の記事より転載させていただきました。