裏口入学は議員秘書が斡旋してるって本当なの?

尾藤 克之

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いま、大物代議士の事務所で、ある取引が行なわれようとしている。後援会幹部は「息子が『K大学』に入りたいと言っていてね。先生の力でどうにかなりませんかね?」と斡旋を依頼。

議員秘書は、「お土産は大丈夫ですか?次の選挙は厳しいものですから」と値踏みをする。「板チョコ3枚ほど持参しました」と後援会幹部。そのうちの1枚を秘書の胸ポケットに差し込む。お前もワルよのぉ。ほっほっほっ!!

もし、このような話をまともに受けている人がいれば、それはテレビドラマの見過ぎかもしれない。今回は、15冊目の著書『「明日やろう」「後でやろう」がなくなる すぐやるスイッチ』(総合法令出版)から、あまり知られていない仕事術をお伝えしたい。

依頼主が有力者の場合、無下にできないこともある。悪い評判を流されたり敵陣営に行かれると困るので形式上、検討する形を取る。その流れは次のようなものだ。

  1. 後援会幹部が秘書に依頼。
  2. 秘書は受験番号を確認する。
  3. お世話になった方の子息が大学を受験。
  4. 合格発表がされる1週間程度前に秘書は大学に連絡をする。
  5. 合否確認を行う。
  6. 合格をしていたらお祝いを送付、不合格でも即座に伝える。

なにか気づかないだろうか?秘書は何も違法行為をしていないことがわかる。合格なら「実力で合格していた」ことになり、不合格なら「実力が達していなかった」ことになる。議員事務所を通すと、何らかの便宜を図ったように見えるが秘書は何もしていない。

ところが、「裏口入学の斡旋でお金を騙し取られる」という話は昔からよくある。筆者は法律家ではないので専門的な見地からのコメントは控えるが、民法708条により、裏口入学を依頼した側にも厳しい判決が言い渡されている。

<民法第708条(不法原因給付)>
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

金品を提供して便宜を図る行為は社会通念上許されない。しかし、「不合格だからお金を返せ」という訴えに対して返却の義務はない。裏口に関する訴訟では同様の判決が出ている。双方に全くメリットがないので、このような依頼には対応をしないことになっている。

また、日本のように裏口入学が犯罪扱いされる国は珍しい。世界的に見ても有力者や金持ちの子供が寄付金で推薦入学をするケースはよくある。誤解を与えるので「裏口入学」→「推薦入学」と表現を変えたほうがいいだろう。推薦であれば、全く事件性はないのだから。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※15冊目の著書『すぐやるスイッチ』(総合法令出版)を出版しました。