ヤフーとLINEの経営統合というニュースは、さすがに私も驚きました。ただ「ビッグカップル」が誕生したからというだけではありません。
そこまでしないとアメリカのGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ハーウェイ)との戦いに生き残ることができない段階になった現実を改めて突きつけられたことへの思いです。
日本のネットサービスを代表する二つの巨人が経営統合となると、一昔前なら独占禁止法により、当局が待ったをかける可能性を思い浮かべた人もいるはずです。これについては楽観的な見通しが支配的なようですが、このまま予定通りに経営統合となれば、GAFA、BATHとの世界的な競争に生き残りをかけることが「国益」としても叶うと、日本国として判断したことを意味します。名実ともに、日本のネット業界が本物のグローバリゼーションに突入するのです。
人づくりをする私からしても、新しく重たい宿題になります。これまで私のゼミを巣立っていった多くの学生が卒業後、ヤフーをはじめネット業界をリードする企業に飛び込んで行きましたが、近い将来、そうした企業の中枢で働きたいのであれば、アジア各国の優秀な学生たちとの競争に勝ち抜かなければならなくなるでしょう。実際、社内英語化で先行した楽天はすでに積極的にアジアの若者を採用しています。
「グローバル人材」は、語学力は必須条件に過ぎません。失敗をおそれず、何度も成功をめざすトライ&エラーにみられるマインドセットも重要です。
先日、東京ヘッドライン主催のイベント『BEYOND 2020 NEXT Forum -日本を元気に! JAPAN MOVE UP!-』で、人材育成を議論しましたが、そこでも申し上げたように私は学生たちに「板挟みと想定外と修羅場に遭え」と言っています。
苦悩をしても失敗を恐れず、もし失敗してもそれを糧にして前を進む…。日本ではまだまだ少ない、そんなマインドセットが当たり前という感覚を、学生が身に着けるだけでなく、教師、親御さんなど、理解できる大人も増やしていかねばなりません。
1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。山口県庁出向中に吉田松陰の松下村塾に刺激を受け、人材育成の大切さに目覚めて大学教員に転身。2001〜2013年、参議院議員(2期)。民主党政権下では文科副大臣などを務めた。政界を離れてから東大・慶応大の教授を史上初めて兼任。2015〜2018年、文部科学大臣補佐官を4期務め、アクティブ・ラーニングや大学入学改革を推進した。社会創発塾公式サイト
編集部より:このエントリーは、TOKYO HEADLINE WEB版 2019年12月9日掲載の鈴木寛氏のコラムに、鈴木氏がアゴラ用に加筆したものを掲載しました。掲載を快諾いただいたTOKYO HEADLINE編集部、加筆いただいた鈴木氏に感謝いたします。