F-35再生産決定はアメリカの希望か

ステルス戦闘機F35A 国内組み立て継続へ 政府(NHKニュース)

NHKの記事ですが日経の記事とほとんど同じです。
恐らくは両方とも政治部の記者が官邸筋からのリークをそのまま裏も取らずに書いたのでしょう。

航空自衛隊への配備が進むステルス戦闘機F35Aについて、政府は、国内での組み立てをやめて輸入するとした方針を見直し、組み立てを続ける方針を固めました。

政府は、愛知県の三菱重工業の工場で最終的な組み立てが行われている航空自衛隊向けのステルス戦闘機F35Aについて、導入コスト削減のため、去年、完成した機体を輸入する方針に変更しました。

しかし、組み立ての作業工程を見直すなどしたところ、国内で組み立てたほうが、輸入よりも1機当たり4000万円から5000万円ほどコストを削減できる見通しになったということです。

F-35の輸入への切り替えは防衛省と財務省が喧々諤々で議論をして決定したことです。その段階で詳細な情報が出されており、輸入の方が断然安い。国内生産は技術移転もなく、単に調達単価を上げるだけだと両省で認識が一致したわけです。当然大臣同士も了解していたわけです。

F35(空自サイトより編集部引用)

工学的な常識があれば、わずか半年やそこらで、何割もコスト削減が可能になるなんて与太話を信じないでしょう。それが自社製でも大変なのに、箸の上げ下げまで米国防総省とロッキード・マーチンに指図されている状態でそれが可能なはずがないでしょう。

更に申せば防衛省の調達単価予定は全く信用できません。空自のUH-Xでは一機23.75億円で調達するUH-60Jの改良型が2倍の約50億円です。これなんて完全に官製談合が疑われて然るべき案件です。陸のUH-Xも12億円が18億円になっていますが、調達が本格化すれば更に高騰する可能性があります。

海自のMCH-101に関して言えば、丸紅にわざわざ輸入よりも川重による生産が安いというインチキの見積もりまで出させました。他の国との調達価格を比較すれば嘘は歴然です。そういう高い値段で調達したので、英海軍あたりで行っている101のシステムの更新をする金も捻出できないわけです。

ぼくの知りうる限り、今回のF-35の国内調達への回帰は米国側の都合らしいです。ロッキード・マーチンの生産ラインに余裕がなくなり、できれば日本向けの機体を生産するのを止めたいという思惑があるそうです。それもパーマネントではなく一時的なものらしい。

同社としてはあまり生産規模を大きくすると今度は縮小しなければならないから、一定規模に維持したいのでしょう。結局国内生産に回帰しても、調達価格は上がる可能性があり河野大臣含めてだれも責任を取らないでしょう。あとは初度費を膨らますことでごまかす可能性もあるでしょう。

官邸の意向をそこまま咀嚼もしないで走狗宜しく、記事を書くような記者クラブメディアは消えたほうが宜しいかと思います。それは新聞記者の仕事ではなくPR会社の仕事です。「PR会社」が記者会見を含む取材機会からジャーナリストを締め出すのは止めてほしいものです。

■本日の市ヶ谷の噂■
空自のC-2輸送機は設計の経験不足で主翼を前につけすぎたので重心バランスが狂ったので、約1トンの鉄板を機首に貼り付けて、バランスをとっている。このためペーロードがその分低下したとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。