今週のメルマガ前半部の紹介です。
“マタハラ”の呼称を世に広める契機ともなったケースが高裁で完全にひっくり返され、人事界隈を超えて大きな波紋を呼んでいます。
【参考リンク】マタハラ裁判で勝訴した原告女性の主張はなぜ、高裁で否定されたのか
正社員の地位を認めるどころか契約社員雇止めも有効、くわえて会社に損害を与えたことに対する賠償までオマケでついてきたわけで、和解せずに追い打ちをかけようとしたら盛大に返り討ちにあった感じです。
とはいえ詳細を読めばこりゃしょうがないなといった印象ですね。従業員20人の零細企業に対しサポート体制が十分でないのを理由に社外ユニオンとつるんで和解拒否して和解金つり上げ、メディアを通じた一方的な主張展開や業務中の録音行為etc……
これで「そもそも本人に正社員として復職する気が最初から無かったっぽい」という衝撃の新証拠が出たらそりゃひっくり返りますね。
とはいえ、本ケースにはビジネスパーソンがキャリアを形成する上で貴重な教訓がいくつか散見されます。いい機会なので考察しておきましょう。
個人が会社とケンカしてもほぼデメリットしかない
まず結論から言えば、従業員個人が組織とケンカするメリットはゼロです。理由はいろいろありますが主に以下の2つです。
・どのみち離職することになるから
意外と知らない人が多いですが、解雇の無効を争った裁判で労働者が勝った場合でも、実際に職場復帰するケースは稀です。就労していた場合に受け取っていたはずの賃金を受け取るだけのケースが大半で、多くは途中で和解して和解金をもらうことを選択します。
そりゃそうでしょう。組織の大小にかかわらずケンカした後も仲良く手を取り合ってお仕事お仕事~なんてムリでしょう。針の筵に座り続けるようなものです。
ちなみに大手なら復職しても(査定や異動で)徹底的に干されることになるはずです。以前に某社で定年までの数十年間を倉庫に隔離していたなんて話もありましたね。
どうせ離職する以上、場合によっては1年以上に及ぶ裁判を、それだけの時間とお金をかけつつ(そしてキャリアに穴を空けつつ)個人が行うメリットなんて筆者はないと考えます。
・ブラックリストにのりかねないから
そしてもう一点留意すべきは、会社とモメたという事実はそれだけで再就職の際に非常にネガティブな印象を持たれかねないということです。
世の中には「タチの悪い弁護士やユニオンと最初からグルで、転職のたびに会社の“あらさがし”して金を引っ張ろうとするブラック労働者」なる人たちが存在します。採用担当にとって、そうしたブラック労働者を採用段階で排除することは重要なミッションの一つです。会社とケンカするということはブラック労働者とみなされかねないリスクがあるわけです。
なんて書くと「労働者が正当な権利を主張して会社と争うことは悪いことじゃない!泣き寝入りしろというのか!」と青筋立てて怒る人もいるかと思います。
でも第三者からすると会社と従業員のどっちが正しいかなんてぶっちゃけわからないんですよ。「上司からものすごいパワハラされて同僚からもシカトされています!助けてください!」なんて相談があり調べてみると「むしろ同僚に当たり散らしていたのは本人で、職場のみんながお手上げ状態だった」なんて話は人事にとって日常茶飯事なんです。
本件にしたって一審では悪のマタハラ企業に対して声を上げた勇気ある被害者みたいな報道だったじゃないですか。それが高裁で180度ひっくり返るわけです。最高裁ではまたひっくり返ることだって十分ありえます。
会社と個人のケンカでどちらが正しいかなんて、突き詰めれば当事者以外には判断しようがないわけです。
だったら人事担当はどうするか。「疑わしきは罰せず」ならぬ「疑わしきは入社させず」とやらざるをえないわけです。だって一度採用してしまうと65歳超まで面倒みることが義務付けられてますからね。社会が企業に「異端者および異端者になりそうな人間はあらかじめ排除せよ」と迫っているようなものです。
ちなみに本件ですが、早い段階からメディアにさんざん社名が流されて“マタハラの象徴”みたいに担ぎ上げられてきているので、業種に限らずいろんな会社の人事が把握していると思われます。
従業員数20人にもかかわらず知名度全国区の社名を履歴書に見つけた時点で「あーあの人か……」となる採用担当は結構いるはずです。
本人かそれとも背後で絵を描いていた人がやらせたのか知りませんけど、安易に社外ユニオンを引っ張り込んでメディアを巻き込んだツケは小さくないなというのが筆者の印象です。
以降、
会社とケンカさせたがる困った人たち
それでも会社とケンカする人へのアドバイス
Q:「退職金的には転職は50歳まで待つべき?」
→A:「50歳というのは退職の大きな節目ですね」
Q:「正社員の各種手当はなくすべき?」
→A:「正社員に限らず手当そのものが時代に合ってないと思いますね」
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