大塚家具は日本の上場企業としては小さな家具会社ですが、父子対決やマスコミが美人社長と持ち上げるので必要以上に注目されてしまい、苦労したと思います。その大塚家具の行方については過去のこのブログでも何度か取り上げたと思います。
2018年8月15日付では「正直な今の感想は『このままではこの会社は終わる』」「お前ならどうするのか、といわれば一般消費者向けについては雑貨店と合併、久美子社長には降りてもらうというシナリオだと思います」と書かせていただきました。今読み返せば厳しいコメントでしたが方向性は間違ってはいなかったと思います。
その大塚家具、出資者を探して紆余曲折したのですが、今般、ヤマダ電機と資本提携を結ぶことで財務的支援を得ることができました。ヤマダ電機は家電だけではなく住宅会社も持ち、住生活のトータライズなサービスを提供するという方針を持っています。そういう意味では傘下に家具会社を持つのは相乗効果として正しい選択であります。
私が昨年のブログで雑貨店と合併という提案をしたのは家具屋が家具屋単体で生きていくのはよほどのことではないと難しいと考えていたからです。今回の提携はそういう意味では正しい方向だと考えています。
さてここまで経営で迷走した大塚久美子社長の続投を決めたヤマダ電機の山田昇会長の意図はどこにあるのでしょうか?個人的にはこのビジネスディールを通じてワンチャンスだけもらったとみています。その時点で十分な業績回復、具体的にはそれなりの額の黒字化をしないと経営者として承認されなくなる可能性はあります。つまり、大塚久美子社長は路頭に迷うかもしれません。
ではワンチャンスで業績が回復するのか、であります。同社は12日付で
業績予想の修正に関するお知らせ」を行っています。その説明文は「前期と比較して売上高が増加するほか、営業利益、経常利益及び当期純利益の黒字化を見込んでおりました。しかしながら、…売上高が計画を下回りました。また、消費増税の反動および大型台風等の天候不順により 10 月以降の受注が減速していること、ECサイトの開発の最終段階においてプログラムの修正に時間がかかり、当初想定よりも事業の進捗が遅延していることなどから、10 月、11 月の売上高も計画を下回って推移しております。
とあります。全く芳しくありません。
一方の山田会長は「(大塚家具の売上高が)10%伸びれば、来期(21年4月期)には黒字になる」との見通しを示し、「3年で(今回出資する)40億円を回収できるくらいの営業利益が出せる」と強気一辺倒であります。
個人的にはヤマダのブランドネームで10%ぐらいの売り上げ増は可能とみています。法人向け売り上げも期待できるでしょう。家電や住宅とのパッケージ売りもできるはずです。ただし、それはヤマダ電機の色であって大塚久美子社長の色ではありません。言い換えれば赤いスーツを着てトップ営業で仕事を取って来い、という厳しい指令とみてよいでしょう。大塚社長は今まで以上に心身ともに苦労することになると思います。
ところでジャパンディスプレイの再生に関していちごアセットと組むことで基本合意したようです。記者会見では「再建方針について『いちごが再生するのではなく、自ら再生してほしいと言われている』(菊岡氏)とし、経営の自主性を維持できるとの考えを強調した」(日経)とあります。
一方でいちごは共同会長に創業者のスコット キャロン氏を送り込む見込みです。私はいちごが日本に来た時から知っていますが、キャロン氏はやり手でそんな「おまかせ」なんてする男じゃありません。企業を支援するということは何のために支援するのか、その意味を考えなくてはいけません。
ヤマダ電機も同様です。支援のためには社長をクビにしようがブランドを解体しようがとにかく立ち直らせることが主眼です。ヤマダ電機商法がいかに厳しいものかは昔から業界でも話題だったと記憶しています。店の様子は全部モニターされ、商品を探している客がいるのに店員がぶらぶらしているとイヤフォン越しに強烈な指示が飛ぶとされます。
大塚久美子社長はヤマダ電機に完全にモニターされ、一歩の猶予も与えず、ダメなら山田会長が「俺がやる」というでしょう。久美子社長は父には報告したとありますが、内容はディスクローズされていません。どう言ったかわかりませんが、父の言葉を代弁するなら「あぁ、遂に人の手に渡ったなぁ」という気がします。
ラストチャンスの成績表は21年夏ごろに発表です。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月13日の記事より転載させていただきました。