今行われている気候変動に関するCOPにおいて、あるいはそれを契機として、石炭に関する議論が注目されています。
この問題に関しては党内においても長く取り組んできた者の一人として、いくつかの点を指摘したいと思います。
まず一つ目。日本の高効率の石炭発電であれば、CO2排出を大きく減らせるという主張。これは正しくありません。SOx、NOx、すなわち硫化化合物や窒化化合物などの大気汚染物質は大きく削減されますが、CO2に関しては従来型の天然ガスを大幅に上回る排出がなされます。
CCS、CCU等の導入をすればという話もありますが、CCSは様々な指摘もされていますし、価格、技術面で乗り越えねばならないハードルがかなり高い現状があります。石炭に関する技術は高額でも構わないが、天然ガスや再エネになると価格の問題を指摘するというのは冷静な議論ではありません。
二点目として、原発や再エネをめぐる現実を考えれば、石炭を続けなければ日本の経済成長を維持できないという点、これも論点のすり替えといわざるを得ません。
化石燃料の発電が当面必要。これは正しい。しかし、化石燃料のなかでも最も環境負荷の高い石炭を維持する理由にはなりません。価格面を言う方もいますが、今石炭が安いのは石油石炭税など税体系が石炭に寛容な結果とも言え、またむしろ、私も散々党内で主張してきましたが、価格面を言うなら、なぜその予測ができた2011年以降、パイプラインやハブの議論をきちんと進められなかったのか、ということを申し上げたい。
またパイプラインの議論をすると必ず安保の観点からの反対論が出ますが、供給源を多様化して、LNGしか無いがゆえに諸外国の倍近い天然ガス価格となっている日本の状況を抜本的に変えることが脆弱性を高めるというのは若干詭弁のきらいがあると言わざるを得ません。
まさにメディア等において、あるいは経済界の一部においても、こうした情緒的でファクトに基づかない石炭維持論があまりに多すぎるということは大きな問題です。むしろ石炭に固執するあまり真の戦略的な政策立案が出来ていないと言わざるを得ません。
今、世界的な潮流の中で、石炭発電には融資も投資もされない流れが不可逆的に起こっています。金融市場からすると、石炭発電はもはやリスクでしかない。そのリスクを日本だけが負うというのは全く合理的な判断ではありません。
今の時点で論理的に考えねばならないのは、鉄鋼業界のコークスのように代替性がないものを除外すること、そして当面化石燃料の中では最も環境負荷が低い天然ガス発電を維持をするということに尽きます。今安易な石炭固執論を日本が展開し続ければ、こうした冷静な論理的な議論も相手にされないことになりかねません。
ここに指摘したのは、主に国内の石炭発電のことですが、輸出についても大きな問題になっています。情緒的な環境保護も情緒的な石炭維持もどちらも、我が国の国益を損なうものです。
エネルギー基本計画において2030年の電源構成について石炭26%(1990年代には10%台半ば)という国際的には非現実的な数値を政府が変えてこなかったこともこの大きな原因ですので、次回の見直しも見据えつつ、冷静な外交戦略、成長戦略を実現すべく、仲間と共に引き続き努力してまいります。
鈴木 馨祐 外務副大臣、衆議院議員(自由民主党、神奈川7区)
編集部より:この記事は、外務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2019年12月15日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。