CEATEC 2019が示すIoT時代の協業

「CEATEC JAPAN 2019」@幕張メッセ。
20周年、おめでとうございます。
出展社数は昨年より62多い787。
「家電」展からIoT展へと舵を切って4年目。
元気。賑やか。そして、面白い。

2009-10年はマルチ端末の3D、11-12年はスマート化、
13-14年はクルマに軸が置かれていました。
2015年にIoTが台頭し、2016年には「脱家電」を宣言しました。
昨年は「Society5.0」を標榜し、IoT、ロボット、AIに軸を移しました。
NECが空を飛ぶ。

もう家電、ケータイ、大型ディスプレイは脇役。
タクシー、自動運転バス、ロボット、テレイグ、都市開発、トイレ。
金融、物流、流通、観光、建設など産業界全体にわたる参加が見られます。
ITの提供側から利用側へ、技術の提案からサービスの実装へ。
そして、IoTやAIが提案から実装へとステージが移ったことが実感できます。
昨年までのぼくの観測はこちらに。
もちろんNTTは5G押し。
4Kでも3-4画面を同時にスイッチして見られる。
開催中のラグビーW杯はわかりやすいアプリケーション。
eスポーツでどう使うといいですかね。
(武田双雲さんがNTT出身だと教えてもらってびっくり。)
富士通はローカル5G押し。
通信キャリアではなく、企業や自治体が限定的なエリアで5Gネットワークを展開する。
工場や倉庫などで機械の稼働や職員の移動などのデータを瞬時に共有・流通させるソリューションを構築します。
いよいよ、5G元年。
昨年シャープは8K押しでしたが、今年は他社と連携する「COCORO LIFEサービス」を強調。
調理家電「ヘルシオ」とクックパッドのIoT向けプラットフォーム「オイシー」が連携して、調理時間や設定温度をレシピに反映して家庭ごとの好みを記録します。
今回はそうした異種協業が目立ちました。
日立はソニーと協業。日立の家電とイヌ型ロボットaiboが連携しています。
冷蔵庫の扉が開きっぱなし。洗濯が終わった。
そんなことをaiboが知らせてくれる。
スマートスピーカーとはちょっと違う家事の楽しみ方。
ほかにもいろんな協業が見られます。
そのソニーは6年ぶりに復帰。だけどテレビなど家電はありません。
テーマは「メディカル/ライフサイエンス」。
手術用の映像システム、内視鏡やX線装置などをつなぐネットワークといった医療分野に特化したテクノロジーを紹介しています。びっくり。
パナソニックは初めてブースの出展を見送りましたし。
協業といえば、ファナックが昨年、シスコ、NTTなど7社を主要メンバーとして製造現場をスマート化する「FIELD system」を進めると発表していましたが、いま見てみたらたくさんのパートナー企業が参加していますね。
村田製作所はハプティクス(触覚)とホログラムとを使って空間に画像と触覚を出現させる協業デモ。
超音波を集中させて空間に触覚を発現させる技術はムラタ、そしてレーザーで空間に画像を表現するホログラムは凸版印刷の技術。ハードとソフトの企業連携です。
同じく京都企業の京セラはAI認識カメラを使って歩行者を認識して人を避けるデモや、人の位置とポージングを検出して音と光で体感できるデモを行っていました。
カメラやセンシングによるIoT+AIの表現。
ANAが分身ロボットのサービスを開始すると発表しました。
この種のテレイグ系ロボットは以前からあって、ぼくも遠隔授業やイベントなどで使ってきました。今回のANAは、移動体験というコンセプトと1千体という規模の目新しさかな。
竹芝CiPやiUもアバターのロボがたくさん働く場所にしたいです。
建設や都市開発がソサエティー5.0タウンを見据えたプレゼンスが目立ちました。
清水建設は豊洲地区、大成建設は西新宿、竹中工務店はメルセデス・ベンツとの協業、大林組はIoT・AIプラットフォーム。
昨年IoT押しだったバンダイは、教材のアーテックと協業してSTEM教材を開発しています。
ブロックプログラミング言語で簡単にプログラミングしてロボットカー対戦。
中学生以上向けに、モビルスーツ開発を体感しながらロボティクスの基礎やプログラミングの概念を学ぶSTEM学習コースも提供するとか。
VAIOです。PCじゃなくて、ロボットです。
ロボット・IoT 製品開発を実現するプラットフォームを提供し、講談社+手塚プロとの「ATOM」、バンダイの「ガンシェルジュ ハロ」などの実績を提示します。
おもちゃやぬいぐるみにVAIOのハードを組み込めば会話ロボになるというしろもの。
ロボットで異彩を放つのが三菱地所。
自動運搬ロボット、警備ロボット、AI清掃ロボット。
ロボットが実際に活躍する様子を見せることで、今後の街造りの形を示す。
竹芝CiPもたくさんのロボットが働く街にしたく、実証を繰り返しています。
もう一つの異彩がLIXIL。ウンコAI。
便器の内部にセンサーカメラを搭載、排便のタイミングや形、大きさを自動判別して集計する。職員が排便記録を手動で記録している高齢者施設での利用を想定。
社内に4台設置し半年かけて3000枚の教師データを集めたそうです。
人の仕事を奪うAI。
奪ってほしいよね。
ソフトバンクが所有する仏ナビヤ社製「ナビヤ・アルマ」は運転席や前後の区別がない11人乗り。
時速18キロで幕張メッセ周辺の公道約1.5キロを15分ほどかけて走る。
赤信号で自動的に止まったり青信号で発進したりする。
TDKが協賛しています。
DeNAが初出展。
AIとビッグデータで乗客をみつけやすくしたり、需給予測をしたりして、「働き方改革タクシー」を提唱しています。
配車アプリMOVを軸にしたタクシーのEV化、使用済みバッテリーの再利用など社会の電動化を加速させる構想も。
一番ぼくが時間を使ったのが情報通信研究機構NICT。
昨年は5G、AI、IoT押しでした。
今年まず説明を聞いたのが量子暗号。
ゲノム情報や生体認証データなど高度に秘匿すべき個人情報に使われるものです。
NECとは顔認証システムで連携、東芝とは医療分野への社会実装に取り組んでいるとのこと。
NICTも連携が目立ちます。
小型衛星・小型ロケット用セキュア通信技術。
「インターステラテクノロジズと連携して宇宙で実証中です。」
ホリエモンロケットですか!
プライバシー保護ディープラーニング。
「エルテスと連携して金融機関とともに精度を向上しています。」
エルテス!
馴染み深いです!
工場の無線環境を整備して安定した現場IoT化を推進するNICTのFlexible Factory Project。
参加者は、オムロン、ATR、NEC,富士通、ムラタ、シーメンス、IIJ、パナソニック、ドコモ、トヨタ、デンソー・・・え、スゴい協業力。
来てますね、NICT。
協業、連携が誇示されたCEATEC。
来年はその成果が現れるかな?

編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。