先週末、米中が貿易協議で「第1段階の合意」に至り、メディアは一応は明るいニュースとして伝えています。アメリカが中国への制裁関税第1弾を掛けて以降、第2弾、第3弾、そして今年9月の第4弾まで、増え続けてきた関税がストップしました。
今回の合意でどうなったのかといえば、9月からの第4弾で関税を課した中国の家電や衣料品など(1200億ドル相当)に課している15%の追加関税率を半減しましょうということと、9月に発表していた12月15日から第4弾の残り品目にかける予定だった追加関税をやめましょうとなりました。仮に合意していなければ、先ほど書いた第4弾の残りとは、スマートフォンやノートパソコン、ゲーム機(1600億ドル相当)などに追加関税15%を発動する予定でした。しかし、発動直前に合意をしましたので追加関税は回避されました。
アメリカでは中国からの輸入で市場の9割が賄われているスマホやパソコンということは、アメリカ国民にとって価格が上昇する懸念がありました。iPhoneなんかは全て中国からの輸入でしかありません。要するに、アメリカ政府としては国民に嫌悪感を抱かれるため、関税を課したくなかったわけです。一方の中国はアメリカの関税を撤廃してほしいと願っていました。中国の輸出は関税をかけられるたびにどんどんどん減ってきたわけです。輸出が減るということは、特に製造業においては新しい工場の建設や、設備投資が減ります。これが一時的ならいいのですが、米中貿易戦争の長期間を見越して、東南アジアに中国から工場を移転する動きも進んでいました。こうなると中国経済にとっても大打撃で、ここは手を打てるところは手を打ったというのが今回の合意です。
でも私が前から言ってきたように、アメリカにとっての貿易赤字、中国にとっての貿易黒字、これらを減らすだけなら簡単です。しかし、そうではない分野は難しく、中国は妥協できないわけで、こういった分野が今回合意ではどうなっているんでしょうか。
例えば外国企業に対しての技術移転強要問題については、アメリカ側の発表では、中国は同意したと言っていますが、中国は全く触れていません。それから中国の国有企業などに対する補助金問題は、米中ともに触れていません。これらは中国から不公正な貿易を強いられているわけであり、日本を含めた世界にとって大問題なんですね。
その点では、中国からの本丸部分で何も得るものはなかった。ただ、多少輸入を拡大するという中国との約束でアメリカとしては、国民生活に影響があるスマホなど身近なものについて値上がりを避けることができ、また農産物を輸入することによって、トランプ大統領が農民を喜ばせることができたいわば簡単なクリスマスプレゼントです。
株価も合意直後の13日はどんどん上がりましたけれども、今週に入ってはこんな感じです。
はっきり言いましょう。
米中貿易戦争はまだまだ続きます!
来年も再来年も。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。