自分の子供に聞きました、「将来の夢は?」「「ユーチューバー」「なぜ?」「だってすごくお金貰えるもん!」。こんなやり取りはもう珍しくない時代になりました。
ちなみに日本FP協会が毎年発表している小学生の将来なりたい職業は2018年版で上から順に男子が野球選手、サッカー選手、医者、ゲームの製作者、会社員、ユーチューバーと続きます。女子はケーキ職人、看護婦、医師、保育士、教師、薬剤師…となっています。我々の時代にはなかったのがサッカー、ゲーム制作者、そしてユーチューバーですが、よく見ると男子の場合、会社員以外は成功すればお金が稼げる仕事が並びます。
一方で会社員が上位に食い込んでいるのは安定志向が出てきた証拠でしょうか?親の背中を見ながら自分が何をやりたいかよくわからず、僕もお父さんと同じようなことをするとイメージしやすいのかもしれません。
これが中学生になるともう少し傾向が明白になります。ソニー生命が2019年に発表した中学生がなりたい仕事は男子が上から順にユーチューバー、eスポーツプレイヤー、ゲームクリエーター、ITエンジニア、社長/起業家、女子は芸能人、絵を描く職業(イラストレーターやアニメーター)、医師、公務員、看護婦でより現実味を帯びてきているランキングとなっています。男子の場合は見事にお金が稼げるという目線になっているのがお分かりかと思います。
特にユーチューバーやeスポーツが選ばれる理由の一つに簡単にお金が稼げる(ユーチューブに投稿するだけであとは視聴者が増えればお金がじゃらじゃら入ってくるイメージ)やeスポーツのように好きなことをしながら稼げるといった安楽型といえます。
子どもたちが満たされすぎているというのは大いにあるのだろうと思います。
ところでアメリカでは若者がアメリカンドリームをつかみにくくなっていると日経が報じています。私が若い時に経験した良きアメリカの時代はどんな田舎に住んでいても夢を持てばブロードウェイのセンターステージでスポットライトを浴びることができるという可能性へのフォーカスでした。
ミュージカル「コーラスライン」はまさにその典型的なストーリーで長期にわたり大ヒットしました。一方、それが簡単ではないということも様々なシーンで取り上げられました。記憶が正しければ映画「フラッシュダンス」でもそんな一幕があったはずです。
しかし、日経がその記事のタイトルにある「米国の夢どこへ、豊かになれぬ若者たち」とは結局お金のことが中心です。「親の所得を超える確率は50%」とか、「純資産や持ち家比率も親の世代に見劣り」とあり、夢=マネーという非常に短絡的な思考回路になっている点で日本もアメリカもかわらない、そして日経ですらマネーをアメリカ人の夢と考えてしまう点において社会の劣化を感じてしまうのであります。
この社会現象について私は人々が「比較社会」を自ら演じている一種の疾病状態に陥っていると考えています。いつも自分の友人や近隣やあるいはフェイスブックでつながる人々と自分を比べ、「あいつは〇〇で大成功した、でかい家も建てたし、年収は〇千万円らしい」と勝手に人の生活を想像し、「それに比べて俺は…」ということなのではないかと思います。
人の幸せとは比較幸福論ではなく、絶対幸福論であるべきと思っています。幸せの定義はありません。100人いれば100人が違う定義を行うのが幸せであり、それ故に他人と比較してどうこうする議論ではありません。ですが、現代社会にあふれる情報化は知り合いの生活ぶりが手に取るようにわかってしまいます。「〇〇さんは昨日あのレストランで食事をしている」という事実に対して普通の感性なら「幸せそうだねぇ」ですが現代では「あの店は一人〇万円ぐらいする。めちゃ、金持ちじゃん」となってしまうところに歪みを感じないわけにはいかないのです。
かつてアメリカを中心に1%対99%の格差の運動があり、それは潜在的には今でも続いています。が、99%に所属する人たちの多くはみすぼらしい生活をしているわけではありません。1%に対するやっかみなのだろうと思います。こんな例えを出しては大変失礼かとは思いますが、ZOZOの創業者の前澤さんが幸せかどうか、自分もああいう人生を送りたいか、といえば私はきっぱりNOを突きつけます。
私は若い人たちが個性を持ってほしいと思っています。そしてそれ以上に自分発見ができるような環境を作ってもらいたいと思います。自分の子どもがサッカーがちょっとできるからといって親の方がサッカーに強い学校に進学させてあとでえらい目にあったという話もあります。アンジェラ ダックワース著の「やりぬく力 グリット」には子供には様々な経験をさせろ、とあります。そうすることで子供は自分の才能を見出し、自己発見していくものなのです。親が決めるものではないのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月18日の記事より転載させていただきました。