ぬれ煎餅に、まずい棒。銚子電鉄の生存戦略

井上 貴至

ブラタカシ。 今回は、千葉県銚子市。

銚子は、日本で最も大きな川である利根川の河口。暖流が半島にぶつかり、古来、日本屈指の漁場として有名です。現在も、8年連続水揚げ量日本一(鯖や鰯などの比較的安価な魚が多いので、水揚げ額は全国4位)。魚を活用した醤油産業も有名で、東京・千葉とを結ぶJR総武線や、銚子市中心部から港を結ぶ銚子電鉄も、早くから開通しました。

ところが、自動車の急速な普及、過疎化、高齢化により、銚子電鉄は大苦戦に。何度も倒産の危機を迎えました。

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銚子電鉄は、経営危機を迎えてからが、すごい!

地元の醤油を活用した「ぬれ煎餅」の製造、社員による実演販売。「ぬれ煎餅を買ってください。電車の修理代を稼がなくちゃいけないんです。」のキャッチフレーズで一躍ブームに。

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うまい棒にひっかけて、(経営が)まずい棒。また、鯖威張る(サバイバル)弁当などアイデア商品を次から次に販売しました。

今では、ぬれ煎餅やまずい棒などの米菓子が売上高の7割を占め、信用調査会社では、鉄道業ではなく、米菓製造業として分類されているそうです。

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速度は単車よりも遅い。電車が走ると、沿線の木や草と擦れる音が印象的です。

素人が一回乗るだけでも経営状況が厳しいのは伝わってきますが、おばけ屋敷電車、イルミネーション電車や様々なイベントなどを地域の方々と実践一生懸命さがひしひしと伝わってきます。だからこそ地元内外に根強いファンがいます。

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牧歌的な雰囲気の電鉄ですが、社員のチームワーク、地域とのチームワークを強化するため、実は、サイボウズOfiiceの活用など先端的な技術も導入しています。

最近は、経営環境の悪化の原因を、外部環境の変化だけに求めて、国や自治体等に支援をお願いするだけの会社もありますが、一生懸命さが伝わり、地域内外の共感がなければ、税金による支援も難しいのではないでしょうか。

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沿線は、太平洋を望む景色や食事など魅力がたくさん。ぜひ皆さんも一度行かれたらどうでしょうか。自虐ネタと応援を動力に走る銚子電鉄からいろいろと感じ、学ぶことがあると思います。

<井上貴至 プロフィール>


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2019年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。