2020年代の日中関係

岡本 裕明

日本が韓国と厳しい関係となっている今、反動的に日本と台湾の関係が極めて良好となっています。もともと良好だったのですが、このところ、日本が台湾の文化を積極的に受け入れる様子がうかがえます。台湾の飲食店が新規進出してきたり、タピオカブームもあるでしょう。日本人の台湾への旅行客も今年に入り概ね10%増ペースとなっており、韓国旅行者が激減しているのとは好対照です。

人と人の関係は外交や国際問題に左右されやすく、良好になればなるほどお互いを知り合いたいと考えます。特にアジア人も気軽に海外旅行ができるようになったのでメディアで取り上げられやすい国や地域には「行ってみたい」という気持ちを促進させるものであります。

一方、香港は日本人観光客御用達の代名詞でありましたが、このところの暴動で日本人の観光客は8月が前年同月比マイナス25%、9月マイナス39%、10月マイナス45%と留まるところを知りません。政治や国内情勢からくるイメージにはインパクトがあることは言わずもがなであります。

さて、日中関係はどうなのでしょうか?

23日、習近平国家主席と会談を行う安倍首相(新華社サイトより)

私は以前から申し上げていることがあります。中国という国家と中国人は別物だと。どの国にも国民性というのはありますが、中国人と日本人は親和性は悪くないと考えています。中国本土で国民党と共産党との戦いの後、国民党が逃げ込んだところが台湾です。そういう意味では日本人が台湾人に親和性を感じ、中国人にはそれがないと考えるのは表面的な違い、政治制度や社会システム、歴史的関係がそうさせるのであって国民性としては基本的に近いはずです。

では中国人が日本人に違和感を持つのはなぜなのでしょうか?一つには中国本土が戦争をしたその地であることは否めません。中国人の「歴史を刻み込み、子孫に語り伝える」という発想が一部で極大化していることもあります。ただ、個人的にはこの歴史問題も時間とともに収束するだろうと考えています。理由は日本への恨みは日本が成功者であり、中国との格差があったという中国側の「差異感情」がその考え方の背景にあったとみているからです。近年の中国の発展でその発想は今後、薄れてくるのではないか個人的には考えています。

また、中国からの訪日客は今年1000万人程度になると見込まれており、多くの中国人が現代の日本を見て好印象を持って帰り、近隣に伝える口コミ化が進むとイメージは大きく変わるものであります。

我々は政治や国の情勢、宗教、経済力などにより国家と国民を同体化しがちです。例えばアメリカ人は自由で心が広いイメージだったのにトランプ大統領のアメリカはその真逆です。そうなるとアメリカに親近感を持つ人は下がります。

内閣府の「外交に関する世論調査」を見るとトランプ政権下のアメリカに対する日本人の持つイメージはトランプ政権発足時と比べてまだ5ポイント程度低い状態です。一方、中国に対しては2016年を底に8ポイントほど上昇しています。(ちなみに対韓国は2009年から37ポイント下落しています。)

また、イメージは年齢にも影響します。戦争を体験した年齢層、あるいはその話や影響を受けた世代はそれを引っ張りますが、世代交代が進むにつれ変わっていくことも事実です。となれば後は政治や世界から見た施策、開放度、親近感、ビジネスや旅行のしやすさ、政府の介入度など中心的世代が直面する感性がより重要になるとみています。

安倍首相は習近平国家主席と今般会談をし、より緊密な関係を築く大方針を確認し20年4月の習近平氏の来日に向けた下地作りをしたのだろうとみています。個別案件は積み残していますが、成果は上がってくるとみています。

中国政府は少しずつではありますが、国際化を進めざるを得ないとみています。どこまで協調できるかはわかりません。ロシアのようにさっぱり親和性が進まない国もありますが、人権問題、通商問題などで世界の注目を浴びる中、中国が融和政策をとる可能性はあるとみています。その場合、日本が大いなるプラス効果を期待できるのだろうと思います。

国民が作るイメージを政治が支えらえるのか、2020年に注目です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月24日の記事より転載させていただきました。