企業のESGへの取り組みは「リスク管理」→「社会的課題解決」の順序が美しい

山口 利昭

最近、経済産業省はいろいろな調査を行っています。私も最近、経産省のアンケート調査に協力しましたが(どんな調査かは、また公表されてからお話いたします)、このたびの機関投資家向け調査では、98%の投資家がESG(環境・社会・企業統治)情報を「投資判断の際に活用している」との集計結果が出たそうで、経産省が24日に公表するそうです(12月23日の日経ニュースより)。ESG投資はもはや時代の流れと言っても過言ではありません。

写真AC:編集部

ただ、今年10月に書きましたエントリー(監査役等の職務環境は「見える化」しなければ向上しない) でも述べましたように、世間でESG経営と言われているところと、機関投資家が期待しているところではギャップがあるように思います。

上記日経ニュースでは、

経産省は、「ESG投資に関する運用機関向けアンケート調査」として24日に公表する。ESG情報を活用する理由として、投資先企業の気候変動リスクへの対応力などをみることで投資リスクを低減させるとの回答が多かった。

と報じられています。つまり、これからの気候変動に企業はどう対応するのか、といった「企業のリスク管理能力」に関心を持っています。機関投資家としては、(有事における)株価のボラティリティが低ければ資本コストを下げてもよい、ということで、まずは中長期的な投資対象にふさわしい投資対象企業のリスク管理面でESG評価を検討している、ということが言えそうです。

一般に、ESGといえば「気候変動の要因を減少させる」といった「社会的課題の解決」(もしくはその解決が業績向上にどう関連するのか、といったストーリー)に思いを寄せる企業が多いのですが、それは順序からすれば「リスク管理」の次に来るのではないでしょうか。まずは中長期的な企業価値の向上というストーリーを描くにふさわしい土壌が存在することを投資家に説明し、そのうえで自社のビジネスモデルが社会の課題を解決できることを(同業他社との比較で)説明する、というのがESG経営の本道と考えます。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。