顔でピッ!便利な世界がもうそこに

大阪市内を走る地下鉄にかつては大阪市営地下鉄だった大阪メトロというのがあります。その大阪メトロが顔認証の自動改札システムの実証実験を始めました。要するに既存のICカードも必要なく、「顔パス」すなわち、顔で「ピッ」と改札が開くシステムをという、これがその顔認証システムなわけですが、今月の10日から実験を始めて来年9月30日(予定)まで実施するそうです。

そして、令和7年(2025年)に大阪で開催される大阪関西万博前に全駅の133駅で顔認証によるチケットレス改札の導入を目指すそうです。これは、ICカードの乗車券や定期券なども併用しながらということですが、最終的には顔パスだけで乗客の管理ができるようにしようというのが目標です。

今回の実験の被験者は、大阪メトロの社員約1200人が顔写真を登録したそうです。

わずかな期間で、覚醒の感がありますね。というのも、先ほど言ったように、大阪メトロと言うのはもともとは大阪市営地下鉄です。こういうことに対しては労働組合が徹底して反対するはずです。私が大阪市特別顧問をやっていたときは、大阪市営地下鉄の民営化を推進する立場の提言を行ってきました。全国の鉄道会社に先駆けての実験ですから、よくぞここまで変わったと思います。

顔認証になればそれは便利です。今の非接触式のICカードでも便利ですよね。しかし、ICカードをバックから取り出す必要があります。先日、私も両方の手に荷物を持って移動している時、重たい荷物を左手の方に持ち替え、右手は軽い荷物とICカードにして、改札を通過しました。荷物で両手が塞がれている人も、お年寄りの方も、ベビーカーを押している方も、顔認証になればICカードを出さないでいいというのは便利ですよね。

しかし、便利になれば必ずその裏表の関係があります。この場合のリスクは、ICカードでも実はわかる事ですが、どこに誰がどんな経路で行ったかわかってしまう事です。仮にその情報が漏れた場合、ICカードやパスワードなどを変えることができます、しかし、顔認証は顔を変えるわけにはいきませんので、リスクが高いと思います。

中国の鉄道では既に、顔認証が始まっています。しかし、現状の中国にプライバシーなんてあって無いような社会ですからね….。ただはっきりと言える事は、こういった顔認証システムはこれから世界中に必ず広がっていきます。すでに日本でも、空港における出入国管理では顔認証が始まっています。私も先日アメリカに行った際、これまで出入国ブースの前でパスポートと顔写真本人を見比べながらチェックして時間が掛かっていましたが、顔認証システムは驚きの速さでした。

これから先、個人情報やプライバシーなどのリスク管理が重要になってきます。私も自慢できる顔では無いですが、気味悪さがあります。

先ほど述べたように、必ずこれは世界で広がるはずです。そうであるならば、そうしたリスクに対して技術、システム、法律などを世界に先駆けて実行していく、これが僕は日本の生きる道だと思います。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。