今週のメルマガ前半部の紹介です。
テレビ東京「ガイアの夜明け」で、大手外食チェーン大戸屋の“働き方改革特集”が放送されたところ、予想外のスパルタンな内容が波紋を呼びちょっとした炎上状態となりました。
【参考リンク】大戸屋、『ガイア』密着で“壮絶なブラック企業ぶり”を全国に晒す
大戸屋の働き方改革特集はなぜ炎上したんでしょうか。また日本中の企業が取り組んでいる働き方改革ってどういうものなんでしょうか。良い機会なのでまとめておきましょう。
生産性を高めるのは誰の仕事か
そもそも「生産性を高める」というのは誰の仕事なんでしょうか。普通に考えれば「それを決める裁量を持っているポジションの人」ということになります。
大戸屋に関してはいろいろな識者が課題や処方箋を提示しています。より魅力ある商品を開発する、商品価格帯を見直すetc……
では魅力ある新商品を開発したり、調理プロセスを見直して回転を上げたり価格を見直す裁量を持っているのは誰でしょうか?少なくとも店長や副店長ではありませんね。経営トップか、それに直属する本社スタッフの仕事なわけです。
そういう立場の人たちが(自分たちのことは棚に上げて)現場の従業員に「ほら!もっと根性見せろ!目が死んでるぞ!」とかやっちゃうのは、どう考えても無理筋なわけです。
組織マネジメントとか興味ない人でも「いや君ら他にもっとやることあるだろう」と違和感は抱いたはず。
ついでに言うと、筆者は外食や小売りといったサービス業では、店長ポストであっても自身の裁量は限定的であり、裁量労働等は馴染まないと考えています。少なくとも開店時間も閉店時間もロックされている中で柔軟に働くなんて無理ですから。そういうのがワークするのは本社のデスクで働くホワイトカラーかエリアマネージャー、スーパーバイザークラスからでしょう。
では、なぜ今回の大戸屋特集は大きな反響を呼んでしまったんでしょうか。筆者は2点あると考えています。
1. みんな大戸屋への期待が高かったから
大戸屋というとなんとなく手作りで野菜豊富で人と体に優しいイメージがあります。それが裏では「おりゃー目が死んどるゾ!」みたいなスパルタ研修やってたわけで、ギャップに驚いた視聴者は多いはず。
ぶっちゃけこれがワタミだったら炎上どころか煙も出なかったと思います(最近ワタミはだいぶ環境改善したらしいですが)。
2. みんな共感するような土壌があったから
フォローしておくと、筆者は大戸屋は全然悪い会社じゃないと思っています。というかそこら中の日本企業で、大戸屋みたいな『現場丸投げ式の働き方改革』がリアルタイムで行われています。
というと「デスクワーク中心のホワイトカラー職は裁量労働で働き、自身の生産性向上に率先して取り組むのが自然では?」という疑問を持つがっついたビジネスパーソンも多いはず。
でもちょっと考えてみてください。日本のサラリーマンに裁量なんてありましたっけ?ロクに無いから毎年懲りずに有給休暇を半分以上捨ててるわけでしょ?
裁量がないから「フレックス勤務なのに定時出社」とか「裁量労働なのに退社する前に根回し必要」とかギャグみたいなこと続けて、何十年たっても満員電車が改善しないんでしょ?裁量があったら「午前中は家で仕事して午後から出社します」とか「朝6時出社してランチ食べたら退社しますね」とか普通にできるわけで。
そうなんですよ。日本型雇用ってバリバリのホワイトカラー職であっても裁量がほとんどないという特徴があるんです。だから本当に実のある働き方改革を実施しようと思ったら、その裁量をどうやって与えるかという部分が一丁目一番地になるわけです。
にもかかわらず、そこはスルーした上で「働き方改革だから19時には退社しろ。もちろん仕事量は減らすなよ」とトップダウンで指示だけ降りてきて、時間外手当だけが減って現場が目を白黒させている企業はぶっちゃけ多いです。
筆者から見れば上記の大戸屋とまったく同じことをやっているわけです。だから、現場に共感する土壌が視聴者の間に広く存在したんでしょう。
以降、
ムラ社会内部を公開するリスク
大戸屋がコケたのは誰も素人の“手作り”なんか求めてないから
年末Q&A蔵出し特番
「子会社の課長ポストって栄転なんでしょうか?」
「youtuberのどこがおもしろいんでしょうか?」
「忘年会って必要でしょうか?」
他。
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年12月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。