自賠責保険:値下がりよりも、充実させるってのはどう?

自動車を所持している人全員が必ず加入している自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料が引き下げられます。

自賠責保険は車の購入時や車検を受ける度に必ず入らなければいけない強制加入です。その目的は簡単に言うと事故の際、その被害者や家族を救済するための保険です。

死亡事故で最高3000万円、後遺障害で最高4000万円が被害者側に支払われますが、はっきり言って死亡事故など、事故によっては高額な賠償金額になることも珍しくない。そうした時自賠責保険では全然足りませんので、任意保険で対人無制限の保険に入ったりするわけです。

考えたくありませんが、仮に死亡事故を起こしてしまい、1億3000万円のお金を支払うとしましょう。この場合は自賠責で3000万円が支払われて、残りの1億円が任意保険から支払われるという形になります。こうしてみると、自動車保険は強制加入である自賠責が1階部分、任意で入る自動車保険が2階部分というふうな仕組みになっています。

では、自賠責の保険料がなぜ下がるのかといえば、自動ブレーキなど安全装備の普及に伴い事故が減って保険金の支払いが減少し、収支が改善しているためだそうです。さて、保険料はどのくらい下がるのかと言えば、1割から2割ほどの値下がりになるとのことですから、かなり大きいです。現在の一般的な2年契約の金額が乗用車が2万5830円、軽自動車が2万5070円で、そこから2000〜3000円ほどの値下がりになるそうです。

ただ、大手損保会社の任意保険はちょっと上がるそうです。その理由は「10月の消費増税と安全装備などによって修理費用が高くなり保険金の支払いが増えると想定されるため」ということのようで、ちょっと矛盾にも思えてしまいますが、3%ほどの値上がりということですから、おそらく自賠責の値下がりのほうが大きいと思われます。ただ、任意保険は人によって等級や補償内容などがちがい、保険料も様々ですし、無事故であれば保険料が毎年のように下がるなどもありますので、一概には言えません。

ところで、自賠責保険料の値下がりは自動車オーナーにとっては当然嬉しいことです。しかし、一度重大事故が起きてしまうと自賠責保険ではまず足りない。だから、任意保険に入るわけです。けれども、保険料を安くしたいために補償額が低い保険に入っている人もいますし、無責任と簡単には言えないのかどうか、私は無責任だと思うけれども、任意保険に入っていない人もいるわけです。

交通事故に遭った被害者は、事故に遭った上にさらに十分な補償も受けられない事態になり、泣き寝入りするケースも中にはあります。当然足りない部分は、加害者側が働いたお金で返済していくことを考えるわけですけれども、それでもやりきれない人もいるわけです。ですから、値下げは嬉しいんだけれども、補償額を上げる考え方があってもいいんじゃないかなと思うんですが、皆さんいかがですか。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。