米国でのクリスマス・ソングと言えば、ワム!の「ラスト・クリスマス」…というより、最近はアップテンポな曲調が季節的にピッタリなマライア・キャリーの「オール・アイ・ウォント・フォー・クリスマス・イズ・ユー」でしょう。色とりどりのイルミネーションで輝く街に響く歌声を聞けば、気持ちがますます浮き立ちましものね。
翻って、日本でのクリスマス・ソングの定番と言えば、松任谷由実の「恋人はサンタクロース」。バブル期に流行したこの曲は、特にそのころ青春を謳歌した皆様の記憶に焼き付けられているに違いありません。冬のリゾートでシュプールを描いた後はゲレンデを背景に愛を囁き、フレンチ料理に舌鼓を打った後に赤プリで一夜を過ごすなど、豪勢なクリスマスを楽しんだあの日々を。
日米問わず、クリスマス・ソングから察するに、人肌恋しくなる季節に恋人が欲しくなるようですね。ちょっと待って、そもそもアメリカ人にとってクリスマスは家族の日と思ったあなた、間違いではないですよ。米国でクリスマスとは、紛れもなく家族と過ごす重要イベントであり、だからこそ年末商戦は1年間の小売売上高の約2割を占めるわけです。
ちなみに今年の1人当たり平均支出額は前年比4.1%増の1,048ドルと、日本円で10万円超えなんですね。年齢別をみると、35~44歳が最も高額で1,159ドルで、18~24歳以外は全て1,000ドルを上回っていました。アメリカ人がいかにクリスマス前に財布の紐をゆるめるかが伺えますが、これは何も恋人に高額な商品をプレゼントするためだけでは、ありません。家族や親戚分のギフトを用意する必要があり、筆者もNY在住時は毎年この時期、6人兄妹を抱える夫の家族それぞれ用のギフトを購入しておりました。日本のお年玉の方が、断然リーズナブルで手間いらずですよ。
このように、米国でクリスマスは家族の日という位置づけなわけですが、ではなぜ恋人と過ごしたがるのか、疑問に感じますよね?答えは簡単で、家族が集う日に単身で実家に帰りたくないためです。デートアプリのBadooの調査によれば、異性愛者の男性の3人に1人、同性愛者の男性では実に45%が恋人を実家に連れて帰るプレッシャーに苛まれるといいます。かくいう筆者も、かつて付き合ってまもないアメリカ人男性にクリスマス要員としてご家族を紹介してもらった経験がございます。1月になると、彼からの連絡はガクンと落ち込んだものでした…。
既婚者の比率が年々低下し、2018年は男性で53.4%、女性も50.8%とそれぞれ過去最低を更新していますから、家族で祝うクリスマスには、恋人の協力が必要というわけです。単に恋人と過ごすことがステータスと化した日本とは、思惑に大きな違いが横たわるというわけですね。ちなみに、クリスマスの日に自分の家族と会ってもらう代わりに、相手の家族とは感謝祭の日に過ごすのが慣例です。
そんなわけでもないのでしょうが、世のシングルにこのセレブの言葉が大いなる共感を呼びました。そのセレブとは、映画「ハリー・ポッター」シリーズで有名なエマ・ワトソンです。国連でのスピーチでも話題を呼び、啓蒙家としても知られてますね。
アイビーリーグの一つであるブラウン大卒の才女でもある彼女、11月号“ヴォーグ誌”のインタビューで「『シングルで幸せ』だなんて戯言だと思ってたけど、私、今とっても幸せだわ」とコメントしたのです。その上で、「私自身が恋人(self-partnered)」というフレーズを披露したわけですが、これが瞬く間にSNSで拡散され、辞書に掲載されるほどバズりました。「自分を愛してこそ」との意味が込められた言葉に、多くが共感したのでしょう。
そうなれば、愛する自分を労わる時間も大事ですよね。2017年実施の調査でも、「絶対自分へのクリスマス・ギフトを購入する」との回答は19%ながら、「検討する」との回答は40%と決して低くありませんでした。かくいう筆者も、ベンジャミン・フランクリンの名言「知識に対する投資は、常に最大の利益を生み出す」を信じて、将来の夢に向け自分へのご褒美ならぬ投資を始める予定です。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年12月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。