2020年 世界展望

あけましておめでとうございます。

今年も皆さんと勉強しながら議論の場を提供させていただければと思います。さて、恒例になりました年初の世界展望、日本展望をお届けします。今日は世界展望から。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

昨年1月1日に19年は「補」の時代になると申し上げました。米中通商戦争や英国のEU離脱、難民問題、北朝鮮問題…など様々な問題を解決し、補正をしていく年になると予想しました。概ね、その方向にあったと思います。では2020年はどんな風が吹くのでしょうか?私はあえて「改」を当ててみたいと思います。

18年に始まった「乱」を19年に「補」したわけですが、必ずしも根本問題を解決できたわけではありません。米中通商交渉も比較的妥結可能な部分だけを取り出して「第一弾妥結」としただけです。中国の統治、人権問題、ひいては経済状況についてもパッチワークで穴をふさぎ続けているだけです。

EUからの離脱がようやく決まりそうな英国も関税や北アイルランド、スコットランドなど国内問題噴出は避けられません。シリア移民はトルコに向かい、エルドアン大統領はもうこれ以上トルコが緩衝帯になるのは無理と発言しています。今までやってきたことは正しかったのか、あちらこちらで疑問を呈し、それが大きな議論や闘争となるかもしれません。

朝鮮半島に目を向けてみましょう。19年末の日中韓首脳会談でお互いの関係を改めて認識しあったもののそれを横目でにらむ北朝鮮は拗ねています。かといって北朝鮮がアメリカをはじめ、世界を敵に回して戦えるわけがないのであって金正恩氏は軍部の士気を高め、自身への忠心を失わないためにアメリカに吠え続けなくてはいけないという演技にも限界が見えています。

ところでアメリカでは11月に大統領選挙があります。経済が順調で株価が更に上昇するならばトランプ大統領有利となりますが、世界のルールと流れをすっかり壊したことが必ずしも快感だとは思っていない国民感情の萌芽はトランプ氏にとって怖い存在となるはずです。トランプのアメリカが続くと見る向きが強い中で仮に同氏が落選するようなことがあれば世界は方向感を失うかもしれません。その影響力は誰も想像できないほどになります。

「改」を当てはめたのは国家の立ち位置が少しずつ変わり始める時代の幕開けだと考えていることもあります。第二次世界大戦後に生まれたブーマー世代は現役から退く年代となり、いよいよ次の世代がリーダーシップをとります。国家の指導部にも若手が増えてくる中、世代交代を如実に感じることになるとみています。保守と革新が年齢層を背景に拮抗する社会が見えそうです。

経済はどうでしょうか?「高揚感なき好景気」であることは確かなのですが、現状の経済状況に不満の声が少ないのも事実です。欲を言い出せばきりがないのですが、少なくとも失業率が低く、金利も低いことでローンを組みやすい現状は多くの若手にはフォローの風となります。

一方で経済が金利の上げ下げで調整できる時代はいずれ過去の産物となるとみています。成熟化し、モノが豊富にある社会においては消費の概念が変わるわけでそれを金利の上げ下げで熱さましや過熱するという物質消費前提のマネーの概念はもう古い発想になるとみています。そんな変化が始まる2020年代の幕開けです。

好景気が長く続く世界で人々は経済的満足感から次の効用を求めるようになるでしょう。経済学の効用とは「財やサービスを消費することによって得ることができる主観的な満足・欲望充足(への貢献)の度合い」(ウィキ)でありますが、財やサービスの消費だけではなく、提供する、寄付する、ボランティアする、貢献するといったテイクからギブによる効用という概念も私はあると思っています。

「幸せ効用の極大化」を究極のゴールとすれば人々のマインドは次の時代に向かっていることは確かに感じられます。今日1月1日から我々は次の10年に向かって第一歩を踏み出します。そこには2010年代とは違う絵図があるでしょう。そして社会の価値観も大きく変わってくる、ここに向かって進む第一歩が2020年であると考えています。

では今日はこのぐらいで。
明日は「2020年日本展望」をお送りします。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月1日の記事より転載させていただきました。