中南米で左派政治が発展か:ボリビア前大統領の亡命先は当初からアルゼンチンと判明

14年間政権を担ったボリビアのエボ・モラレス大統領は大統領選で不正疑惑に問われてボリビアを後にして11月10日、メキシコに亡命した。この時点で、12月10日にアルゼンチンの大統領に就任することになっていたアルベルト・フェルナンデスと合意が交わされていたようだ。即ち、フェルナンデスが大統領に就任した時点でアルゼンチン新政府が彼の亡命を受け入れるということであった。

infobaeより引用

フェルナンデスは彼の生命の危険を感じてボリビアから早急に出国することを勧めたようだ。それができるようにメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)にモラレスの受け入れをフェルナンデスは要請したようだ。それを了解したアムロは早速ボリビアに彼を救出するために軍用機を送ったというわけだ。

一時的にメキシコで待機してもらうということであったようだ。だから、エボ・モラレスが搭乗したメキシコの軍用機がメキシコに戻るまでの一時的な困難にもフェルナンデスが介入して問題を解決したのであった。

だから彼がメキシコに亡命した時点で既に上記のような経緯がメディアで報道されず裏舞台であったのである。

エボ・モラレスがなぜアルゼンチンに亡命することを望んだのか。アルゼンチンとボリビアは国境が接しているからである。そして、彼の政党社会主義運動党(MAS)の選挙の本部をアルゼンチンに設けるためであった。それが、メキシコからでは地理的に遠すぎるのである。

アルゼンチンに入国する前の11月7日に先ずキューバに飛んだ。目的は健康相談だとした。彼が大統領だった時の健康管理はキューバ人医師が担当していたからだという。この時点ではキューバでの滞在は表向きは一時的なものだとした。しかし、メキシコのマルセロ・エブラルド外相にはキューバに向かう前日メキシコには戻らずアルゼンチンに向かうことを知らせたという。(参照:elpais.com

同月12日、キューバからメキシコに戻ることは否定してアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに到着。亡命者として入国し、そのあと難民として申請した。モラレスと一緒に次の3人が同行した。ガブリエラ・モンターニョ前厚生相、ディエゴ・パリー前外相、ホセ・アルベルト・ゴンサレス前米州機構大使。その後の便でアルバロ・ガルシア・リネラ前副大統領も入国した。(参照:infobae.com

彼らが入国の際は亡命者、そして一旦入国してから難民者としたのは難民の方がより人道的な待遇が受けれるからである。しかも、難民だと国外追放や送還されることがない。アルゼンチンの国籍も取得できる。政治的な活動も規制されていない。しかし、入国の際にフェリペ・サラー外相の方からボリビア現政府と政治的摩擦を避ける為にモラレスに「アルゼンチン国内から政治的発言などは発信しないように」と要請された。

しかし、外相からのこの要請はモラレスがブエノスアイレスに到着するや無視された。モラレスはツイートで「ひと月前にメキシコに到着。兄弟国で我々を救出してくれた。私は悲しく落胆していた。今アルゼンチンに到着。貧しい人たちと偉大な祖国の為に戦うためだ。私は元気を取り戻した。支援と結束を提供してくれたメキシコとアルゼンチンに感謝している」という内容だった。(参照:infobae.com

また彼の息子アルバロ(24)と娘エバリス(25)は先にアルゼンチンに11月23日に入国している。それまで在ボリビアのメキシコ大使館が二人の身柄を保護していた。また、アニェス暫定大統領もモラレスの子供には罪はないとして追跡しなかった。しかし、11月はまだモラレスの亡命受け入れを拒否したマクリ大統領の政権であることから、二人は亡命者ではなく観光者として入国した。その後の世話はフェルナンデスが行っている。

二人は異母姉弟である。アルバロは11歳の時に母親の病気の治療を父親に懇願したのがメディアで報道されて以来息子の存在が社会で明白になった。エバリスも母親に養育費を支払っていないとして陳情したことで彼女の存在も公に知られるようになった。今では二人ともモラレスとは円満な親子関係を維持している。(参照:clarin.com

次期大統領選挙に向けてモラレスは自党の社会主義運動党(MAS)の選挙対策本部をボリビアと最も国境が近い都市サルバドル・マッサに設けると発表した。彼が選挙に立候補せず候補者を決めての初めての選挙キャンペーンの実施となる。(参照:infobae.com

今回のモラレスを受け入れたように、今後のアルゼンチンの外交はマクリ前大統領の右派から左派に移行した外交を展開することになるようだ。実際、フェルナンデスが大統領に就任して48時間内にキューバ、ロシア、中国のそれぞれ代表との会見を優先した。

彼はアムロと連携してラテンアメリカで左派系政治の発展のための主軸を構成したいと望んでいるのである。(参照:infobae.com

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家