事業再編の第二ブーム到来か?

日本の上場企業でM&Aを手掛けている日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズといった銘柄が軒並み高値を付けています。これらの企業は主に日本の中小企業の「仲人」を務めており、後継者がおらず会社の従業員を引き継いでほしい、会社の技術を継承してほしいといった要望が増えていることが背景かと思います。

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いわゆる中小企業の経営者は人口分布(=ブーマー族)と戦後の復興という二つの要素を掛け合わせると確かにそろそろ自分で切り盛りするにはぎりぎりの年齢となる頃かと思います。中小企業には同族経営と呼ばれる身内での経営も多いのですが、身内といえども昔のように子供がたくさんいるわけではありません。

「年収1000万円で都内のピカピカの高層ビルで勤務するステータスを捨てて親せきのおじさんの会社を継ぐなんてイケてない」と思う人は多いしそれ以上にその奥様が「止めてよ、そんなリスクがあるようなこと。あなた、だいたいその業界のこと、何にも知らないじゃないの。家族が路頭に迷ったらどうするの」といわれるのがオチです。

事業再編第二ブームと称したのは第一がバブル崩壊後の銀行主導の本業回帰大作戦にあったと考えています。その際の事業再編はむしろ大企業の関連事業や海外事業の整理であり、銀行から「お宅、この事業、ちっとも儲かってないじゃないですか?いつまでこんなものをぶら下げているのですか?」とやられたのです。当時は銀行が番を張っていたため、多くの企業は「仰せの通りにいたします」となったわけです。

今般の第二ブームはむしろ、日本の8割を占める中小企業の整理、効率化という意味で日本の経営の立ち位置が大きく変わる可能性を秘めています。オリンピック後、日本は「夢も希望もない的トーン」が聞こえてきますが、私は全然そんなことを思っておらず、むしろチャンス到来だと思っているのです。なぜか、といえば古いしがらみや取引慣習などにとらわれていて大企業の陰に埋もれてしまっていた本当の宝が発掘できるからかもしれないのです。

実は北米でもこの事業再編は再びブームを見せる気配があります。私はラザードというM&Aの大手専門企業に投資しておりますが、業績は好調で先行きも明るい状況です。なぜか、といえば資本効率を見て悪い部門を売却するケースが相次いでいるからです。

例えばGEが現在行っているリストラ劇を見ても不要部門(=稼ぎが悪い部門)を次々切り離しているのはまさにこの好例なのです。資本効率の一つに自己資本と有利子負債という「投下資本」をもとに計算する方法があります。ROICと呼ばれるもので私のように資本の部分が自営でよくわからない場合には買収などで投下した資本をベースに計算するようにしています。

そこで見えることは日本企業の稼ぎは悪いという点でしょう。特に中小企業はひどいケースが見て取れるのですが、多分に経営そのものが時代にマッチしなくなっているケースが見受けられます。この20年だけ見ても世代替わりが進み、人々の感性、常識観が変わる中で経営を取り巻く環境もどんどん変化してきました。ところがオーナー社長の場合、成功体験があるため、なかなか変われず、真綿で首を締める状態になっているところが多いということです。ならば首を絞められて倒れる前に事業を売却するという手段はあるかと思います。

もう一つは、あまり誰もやらない手法ですが、私が一事業として行っている分野があります。それは、例えば赤字企業で資産もなければ会社価値は基本的にゼロとみなされる公算が高いのですが、ある程度リストラをして、きれいな会社の状態に戻してマイナスの資産価値をプラスに転換してから売却するという手段であります。

これを手掛ける人はほとんどいないと思いますが私は自分でできる範囲でお引き受けさせて頂いています。家を売却するのに庭の草木がぼうぼうで家の中も汚ければだれも買いませんが掃除をすれば魅力は大いに増すでしょう。これです。

私は日本の第二、第三創業の時代が今年からくるとみています。オリンピックまでと思っていた経営者がオリンピック後の経営を託すたすきリレーですね。これぞ、日本のお家芸でしょう。私はそこに光明を見ています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月14日の記事より転載させていただきました。