文在寅大統領の会見、二つのポイント

韓国の文在寅大統領が14日に記者会見を行った。

韓国大統領府Instagramより:編集部

私が重要だと思った二つの点を指摘しておきたい。

一つは、所謂「徴用工」問題に関する発言だ。

文大統領は次のように述べている。

「慰安婦合意の際、政府間でどんな合意をしても問題解決に役立たないと経験した」
「最も重要なのは被害者らの同意を得ること」

こうした発言を目にして呆れ果てる日本国民が多いだろう。何故なら、この文大統領の発言を真に受ければ、歴史問題に関して韓国政府とどのような合意をしても全く無意味だと大統領自らが語っているからだ。たとえ、両政府で合意に至っても、所謂「反日派」の人々が煽動し、一人でも被害者が納得いかないと言い出せば、いかなる合意も無意味なものにされてしまうからだ。

そもそも「最も重要なのは被害者らの同意を得ること」などというが、慰安婦問題の際、慰安婦の人々の感情よりも反日を優先させたのは韓国の方ではないか。(この問題については、拙著『「リベラル」という病』で詳述しているので、興味を持たれた方は、そちらを参照して頂きたい)

歴史問題に関して、日本政府が出来ることは、もはや何もない。ただ、韓国が冷静さを取り戻すのを待つしかない。彼らが「恨み千年」というならば、千年間は仕方ないと思うしかないだろう。無意味に敵対することはないが、過度に接近しようとは試みないことが重要だろう。

もう一つ、私にとって重要だと思われた発言は、北朝鮮と韓国の間での「南北事業」再開に意欲を見せた際の発言だ。

「南北関係は我々の問題。もう少し主体的に発展させる意思をもつべきだ」

私が気になったのは、この「主体的に」という表現だ。私は朝鮮語が出来ないので確認できていないが、これが「主体思想(チュチェ思想)」の「チュチェ」という表現であったとすれば、看過できない。

「主体思想」とは、北朝鮮の独裁体制を擁護するためのイデオロギーだ。昨年末、ジャーナリストの篠原常一郎先生と私で『なぜ彼らは北朝鮮のチュチェ思想に従うのか』という本を出版したが、この中で篠原先生が重要な指摘をしている。それは、韓国の文政権を支える人々が主体思想派だということだ。主体思想という狂気のイデオロギーが政権を蝕んでいるというのである。

私自身は韓国政治に精通しているわけではないから、その実情はわからない。だが、大統領自らが「チュチェ」という言葉を使って、北朝鮮との交流を進めようとするならば、やはり文在寅大統領自身も「チュチェ思想派」とみなされて致し方ないのではないか。

歴代大統領の中でも最も北朝鮮に融和的なのが文在寅大統領だ。北へ北へと韓国を誘おうとするならば、最も危険な大統領と呼んでも過言ではないだろう。

下記の動画で詳しく説明しているので、ご覧いただければ幸いです。

岩田 温  大和大学政治経済学部講師
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院修了。専攻は政治哲学。著書に『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)『人種差別から読み解く大東亜戦争』『「リベラル」という病』(彩図社)、『逆説の政治哲学』(ベスト新書)、『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『流されない読書』(扶桑社)などがある。ブログ『岩田温の備忘録