米中両政府は15日、米中貿易協議の第1段階合意文書に署名した。米国側は今回の合意で、2019年9月に発動した追加関税第4弾(約1,100億ドル相当)の税率を15%から7.5%への引き下げに応じた。米国による税率引き下げは、発動を開始した2018年7月以降で初めて。また、2019年12月15日発動予定だった追加関税第4弾の残り(スマートフォン、ノート型PC、玩具、衣類などが対象、約1,600億ドル)の中止を盛り込んだ。
ただし、トランプ大統領は発動済みの追加関税措置(約3,600億ドル相当、全体の3分の2)の撤廃については、第2段階の協議へ持ち越しとなると言及。関係者によれば、第2段階協議は11月3日予定の米大統領選でトランプ氏が再選されるまで先送りされる見通しで、それまでは中国が合意内容を遵守するかが見極めの期間となる。その他、米国側が中国による合意事項に反する行為をみとめた場合、追加関税を再度発動する内容も盛り込んだ。
署名式の様子。習近平首席は訪米せず、親書を携えた劉鶴副首相が署名。
合意文書は本文88ページ、最終規定を8つの章立てで構成され、概要は以下の通り。なお発効は署名から30日後、2月14日となる。
第1章 知的財産保護
第2章 技術移転
第3章 食品・農産品における貿易
第4章 金融サービス
第5章 マクロ経済政策と為替問題、透明性
第6章 貿易拡大
第7章 二国間による評価と紛争解決
第8章 最終規定
――このうち、注目は第6章の貿易拡大ですよね。中国は2017年比で輸入額を2,000億ドル引き上げる方針で合意しており、内訳は以下の通りです。
今回の合意については「the glass as being half empty」など、道半ばと批判する声が聞かれました。企業への産業補助金や国有企業の改革などは先送りされ、華為技術をめぐる禁輸措置も触れられておらず、中国の構造改革を推進する内容は程遠いことは事実です。
ただ、第7章で明記されたように、USTR代表と中国副首相が半期に一度会合をもつという、ブッシュ政権(息子)時代に始まった「米中戦略対話」の復活(オバマ政権では”米中戦略・経済対話”)を確認しました。また、知的財産保護でも、よく読むと、中国は企業秘密の保護策強化に加え「意図的な企業秘密の悪用」に対し刑事罰を検討する方針を受け入れたも同然です。baby stepながら、多少の進展があったといっても過言ではないでしょう。
次に想定される問題は、ホーガン欧州委員(通商担当)が指摘するように、世界貿易機関(WTO)の調査です。中国に輸入引き上げ額を求めた二国間合意に基づく「管理貿易」がWTOルールに違反するリスクをはらみます。
(カバー写真:The White House/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年1月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。