「人の振り見て我が振り直せ」米国の財政赤字

米財政拡張、支える世界 金利求め国債大量購入:日本経済新聞 

昨日(1月19日)の日経新聞1面トップの大きな記事。「人の振り見て我が振り直せ」という格言もあるのに、なぜ他人のことばかり心配して、自らを省みないのか?この記事がこの大きさなら日本の財政赤字問題は毎年5ページくらいを使って批判しなければならない大問題だ。

日本経済新聞(1月19日朝刊より)

 

この記事にあるように米国の債務残高は国内総生産(GDP)の約100%だが、日本は240%だ。「(単年度の)財政赤字額は年1兆ドル(約110兆円)を超えた」と記事で案じているが日本の赤字(33兆円)の3倍強に過ぎない。

一方米国の名目GDPは日本の4倍もある。大雑把に言って税収はGDPに比例すると言ってもいいから、米国の財政赤字(単年度)は税収額と比べれば、日本ほどの大問題ではない。さらに言えば、米国のこの巨大な単年度赤字はこの数年の話だが、日本はこの巨大財政赤字をバブル崩壊以降30年間も続けている。

記事でも「利払い費が4年でほぼ倍増し、債務が雪だるま式に増えることを心配している」が、日本の(税収に対する)巨大な累積赤字を考えると、長期金利上昇期の日本の債務の膨張ぶりは雪だるまどころではない、雪崩が生じる。

さらに記事は「インフレ率の高まりなどで低金利の前提が崩れれば、大量に買った世界の投資家が損失を被る」ことを心配しているが、日本の場合、今、国債を買ってくれているのは日銀(+裁定取引で短期保有目的で買っている外国人)だけだ。米国債では世界の投資家が損失を被るが、日本では日銀が損失を被る。日銀倒産の危機だ。

写真AC:編集部

記事によると「チャールストン大学のバンデンバーグ教授は『米財政は持続不可能な道を進んでいる』と指摘する」とあるが、この程度の財政赤字で「持続不可能の警報が出てくる米社会は健全だ。日本では、これだけの大赤字なのに、もっと財政出動をしろ、財政赤字拡大など問題ない、という人がいる。この状況を危惧する。

政府に気兼ねして日本の財政問題を大きく取り上げられない新聞が、暗に日本の財政に警告を与えている記事と私は解したい。

藤巻 健史   経済評論家、前参議院議員

元モルガン銀行東京支店長。ジョージ・ソロス氏アドバイザーを歴任。一橋大学卒、ケロッグ経営大学院修了 MBA取得。学校法人東洋学園大学理事。仮想通貨税制を変える会会長。2013年〜19年、参議院議員を務めた。オフィシャルウェブサイトTwitter「@fujimaki_takesi」