今年(2020年)の正月の最大のお年玉は、ZOZOの創業者、前澤友作氏がツイッターで告知した10億円のプレゼントだろう。これは彼のツイッターをフォローしてそのメッセージをリツイートした人の中から1000人をランダムに選んで年間100万円(毎月8万3000円)を贈るもので、当選者が1月19日に発表された。
このお年玉企画は2度目だが、今年は彼がこれを「ベーシックインカム、前澤個人でやってみた」と書いたことが話題を呼んだ。このお年玉は厳密にはベーシックインカムとはいえないが、これに多くの人々が賛同した背景には、今の社会保障に対する不満があるのではないか。
ベーシックインカムには莫大な財源が必要
ベーシックインカムとは、簡単にいうと、政府がすべての国民に定額のカネを払う制度である。政府が所得や年齢などの制限をなくして一律に払うことから、UBI(Universal Basic Income)ともいう。
こういう提案は新しいものではなく、すべての人に最低所得を保障するという発想は産業革命のころからあったが、現在の社会保障では年金や生活保護という形で特定の人に支給している。
しかし年齢を基準にして所得を再分配するのは不合理である。大富豪に年金を払って貧しい若者から税金を取るのは不公平だ、という発想から出てきたのがUBIである。
これは全国民に死ぬまで支給する制度だから、1000人に1年間だけカネを配る前澤氏のお年玉はUBIの実験にはならないが、彼の発想はわかる。これは彼が一緒に宇宙旅行を計画しているイーロン・マスクや、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも賛成している。
その理由は、アメリカではITやグローバル化でホワイトカラーの雇用が失われ、所得格差が拡大していることだ。これ自体は避けられないことで、それを防ぐためにITを規制したりグローバル化を止めたりするより、経済活動は自由にして最低所得を保障したほうがいい、というのが彼らの発想だろう。
日本では高齢化が急速に進んでいるため、社会保障が老人福祉に片寄り、若者との世代間格差が拡大しているが、これも今の賦課方式の年金制度を前提にする限り避けられない。
これをUBIに置き換えるには、莫大な財源が必要になる。100万円を日本国民1億2600万人に支給するには126兆円の財源が必要になり、現在の社会保障給付の総額123兆円を上回る。