田舎暮らしが合う人、合わない人の結論

黒坂 岳央

こんにちは。黒坂岳央(くろさかたけを)です。
※Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

筆者は東京で会社員をしていましたが、起業に際して熊本県で田舎暮らしをしています。住み始めて数年が経過しましたが、最初の方は面食らうことも多く、東京に戻りたいと思う瞬間は度々ありました。しかし、最近では「自分は田舎暮らしに向いているかもしれない」と感じています。

よく「都会VS田舎暮らし」のような図式で議論が展開されています。が、これはまったくのナンセンスな話です。都会に合う人と田舎に合う人に分かれるので、「こっちのライフスタイルが優れている」という議論は「その人による」としか言いようがないからです。

田舎産まれ、田舎育ちだけど田舎嫌い

よく「生まれ育った故郷が一番」という意見が聞かれますが、これは正しい見方ではありません。なぜなら、「田舎産まれで田舎育ち。だけど田舎は嫌い」という人を見ることは少なくないからです。

acworks/写真AC

筆者が東京に住んでいた頃、実家が田舎という人とたくさん知り合いました。彼らの中には「進学、就職で東京に来たけどいつかは故郷に戻りたい」という主張をする人もいますが、「地元が嫌い。閉鎖された人間関係と可能性にうんざりしたから、都会で勝負しに来た。東京は田舎と違って他人の一挙手一投足に関心を持たれないからすごく楽」という人もいました。

実業家を務める人の中にも「田舎では変わり者扱いされて辛かったし、変わらなさ、一緒がいいという価値観と自分の人生観が拮抗していた」と述懐する人もいますから、「生まれ故郷次第」という意見は一要素にはなり得ても、決定的ではないと感じます。

筆者も生まれは大阪府、田舎ではありませんがずっと東京に憧れ、早く大阪を出たいと思っていましたので、田舎を出たい人の気持ちはよく分かるのです。

都会育ちに田舎暮らしは慣れないことばかり

正直なことを言えば、筆者は最初は田舎暮らしに苦痛を感じていたことがありました。

最初に面食らったのは人間関係の狭さです。スーパーへ行けば「平日昼間からベビーカーを押している何をしているのか分からない怪しい男」というレッテルが貼られてしまったようで、珍しいと映ったのかすぐに顔を覚えられて見知らぬ地元民から声をかけられることが何度かありました。

また、ショッピングモールやスーパーでは頻繁に従業員にばったり遭遇、「あのスーパーでこれ買っていましたよね」などといわれ、プライベートでも見られている気がして気が疲れてしまったものです。東京では隣に住んでいる人としっかり顔を合わせるのは物件への入居と退去の時くらいですから、この感覚の違いには最初の頃は大いに戸惑いました。

そして「行事」へのプライオリティをおく感覚も、都会とは大きく異なります。雇っている従業員が「地域の行事」を理由に有給を取得したいというのですが、どれも聞いたことがないような行事名ばかり。そして本人にとっては自分の担当業務以上にプライオリティが高い、という感覚も大きく違うと感じたものです(もちろん本人の価値観を尊重しますが)。

言い出すとキリがありませんが、都会と田舎の人とでは他国の外国人くらいの感覚の違いがあると感じました。ビジネスの進め方や時間の感覚も違いすぎて、最初は色々と悩みが多かったです。

写真AC

田舎に合うのはこんな人

田舎に合う人は「自然が好きで、上手に人付き合いが出来る人」と言われがちです。しかし、筆者は住んでみてそれ以外の要素があると感じました。

  • 外部の娯楽に頼らないで楽しめる人
  • 固定費を抑える目的
  • 一人でいるのが好きな人

こうした要素です。

言うまでもなく、都会は娯楽で溢れています。特に東京は年中、面白そうなイベントや娯楽施設で溢れかえっており、ノープランで外出しても散発的に開催されているものに顔を出すだけで楽しんでしまえるのです。が、田舎にはそのような娯楽はありませんから、外部の娯楽に頼りたい人には厳しいでしょう。

筆者はビジネスをすることが楽しいと感じる気質で、ビジネスをネットでやっていますので、外部の娯楽の有無はまったく気になりません。

また、固定費を抑えることについていえば、田舎はかなり強いと感じます。これを言うと驚かれるのですが、筆者は家の中で短距離走が出来るくらい大きな敷地(田舎住まいだと敷地の広さなどまったく自慢になりませんが)にいますが、月の生活費はトータルで10万円もかかりません。食費、通信費、光熱費など全部合わせてもです。生活費は非常に安価ですから、その分を旅行や食事の時など変動費に投資をすることで、充実した生活を送れています。

そして最後に求められるのは一人で楽しめる気質です。筆者のように集団行動が苦手で協調性がない人柄だと、なかなか田舎では受け入れられません。実際、ここには友達と呼べる存在は一人もいません。飲み会などは従業員以外とは一度も開催したことがありません。しかし、その分、可処分時間のすべてをビジネスに注ぎ込めますので、一人でいることに充実感を覚えます。

田舎暮らしは合う人と合うない人に、はじめから分かれています。「こっちが優れている」という議論自体に意味がないという話です。