武漢の豪州人が隔離される島は「絶海の孤島」ではなく、インドネシア至近の場所

オーストラリア政府は、中国・武漢市での新型肺炎からの避難に、武漢市を含む湖北省に滞在する自国民の一部を避難させる計画を明らかにしたが、その隔離場所がオーストラリア本土から1500キロのクリスマス島と聞き、ビックリした。いまだ消える様子の見えない森林大火災を避ける意味もあるのだろうが、さすが英国の流刑植民地オーストラリアの歴史経験が生かされている。

オーストラリア領クリスマス島(David Stanley/flickr)

オーストラリア政府は新型コロナウィルスの潜伏期間とみられる14日間にわたって隔離するというが、武漢から緊急帰国の邦人について、診断・隔離の対応がチグハグで、批判の声も強い日本とは対照的だ。ところがクリスマス島はオーストラリア領の孤島といっても、インドネシアのジャワ島から約360キロとごく近い。

インドネシアの首都ジャカルタがクリスマス島に一番近い”大都会”だ。もともと微妙な関係のオーストラリアとインドネシア両国だ。政治問題になりはしないか。このジャカルタでは富裕層はほとんどすべて華僑系で、カジノ好きな彼らは国内非合法な施設から始まり、マレーシアのゲンティンハイランドのカジノなどへの遠征を楽しみにしていた。

ジャカルタのこの華僑グループのネットワークが功を奏し、1993年にはこのクリスマス島にカジノ施設が完成した。そのジャカルタの富裕層、オーストラリア、東南アジアから空路でカジノ客を当て込んだが、結果的に失敗に終わった。

続いて登場した大がかりでしゃれたシンガポールのカジノ施設の誕生が原因だ。それでもオーストラリアの航空会社の空路便に混じって、週一程度のインドネシア国営ガルーダ航空のチャーター便はいまも飛んでいる。

クリスマス島のカジノは失敗だったが、もう一つ、テレビなどで何度も紹介され有名なのが、島全体が赤ガニの生息地ということだ。秋の産卵期にはこの赤ガニの移動により、クリスマス島全体が赤く染まるといっても過言でない。新型肺炎のコロナウィルスは熱に弱いと指摘する医学者もいる。インドネシアという赤道直下列島至近のクリスマス島は、あるいは隔離に最適な場所かもしれない。

しかし同時に、世界有数の人口を持つインドネシア至近の場所が、オーストラリア領クリスマス島というのは、ちょっと気になる。風評が広がらなければいいのだが。