田原総一朗です。
先日、萩本欽一さん、「欽ちゃん」と対談をした。
「『好き』を仕事にするのは危ない」“生涯現役”田原総一朗と萩本欽一が次世代に贈るアドバイス
重要なのは「運・鈍・根」!? #萩本欽一 #田原総一朗 #文藝春秋 #文春オンラインhttps://t.co/iGPlqpQemO— 文春オンライン (@bunshun_online) January 24, 2020
僕が萩本さんにお会いしたいと思ったきっかけは、小泉進次郎さんの言葉だった。
医療技術が進み、近い将来、人間の平均寿命が100歳、いや120歳になるかもしれない。
80歳からさらに40年も生きるとしたら――。
これまでの人生設計はあてはまらない。
そんな時代に、人々は何を生きがいにしたらいいのか。
僕が「人生120年時代」をテーマに、取材を進めていた時、
小泉さんがこう言った。
「萩本欽一さんは、いま大学生なんですよ。大変面白い生き方をされています」。
僕はどうしても、萩本さんに会いたくなり、僕の番組に出ていただいた。
お目にかかるのは、今回2度目だ。
萩本さんは、73歳で駒澤大学仏教学部に入学。その動機がいい。
「歳を取って物忘れがひどくなるのをみんなは嫌う。けれど僕は、忘れた分だけ新しい知識を入れればいいと思った」
というのだ。
仏教学部を選んだ一つの理由は、仏教の「言葉」が、魅力的だったことだという。
「仏教を勉強して、素敵な言葉をたくさん知ったら、お笑いや番組に生かせるかもしれない」
と考えたのだ。
萩本さんの大学生活の話は楽しく、僕までわくわくしてしまった。
1年生のとき、女子学生が「欽ちゃん、友達になろう」と、声をかけてきた。
そのとき萩本さんはどう答えていいかわからず、ちゃんと返事ができなかった。
4年経って、その女子学生に、「あのとき、なんて言ったらよかったの?」と訊ねてみた。
すると彼女は、
「欽ちゃん、簡単じゃない。『もう友達だよ』って言えばよかったのに」
と答えたそうである。
なんと素敵な言葉か、萩本さんは感動した。
また萩本さんは、若い学生たちに、時々ビールをおごった。
「ビールを1杯ごちそうすれば、いろんな話ができる。
そういうことをしないと、面白くないよね」と笑う。
世代を超えた、そんな出会いが素晴らしいと思う。
定年で退職した人たちが、その後の生活で何に苦しむか。
一番は「孤独」だという。
そういう人たちにとって、大学は、勉強するだけでなく、社会とのつながりを保つ場となりうると思う。
正式な学生にならなくとも、聴講生であったり、社会人向け講座を受講するなど、いろんなかたちがあっていい。
少子化で学生減少が予想される今後、大学は世代を超えて学ぶことができる、
もっとオープンな場になってほしい。
いまもそうした動きはあるが、今後もっと活性化すべきだろう。
萩本さんは、2019年5月に駒澤大学を自主退学した。
「人生の最後はお笑いで終わりたい。80歳になったら身体が動かないだろうから、お笑いに全力投球するなら今だ」。
そう考えたのだという。
「最後に『新しいお笑い』を作ってみたくなった」。
大学に通ったおかげで、今までのお笑いの延長ではなく、
「新しいお笑いを」、
と考えられるようになったのだ。
僕は萩本さんから、おおいに刺激を受けた。
何歳になっても学ぶことはできる。そして「新しい」ものを目指すこともできる。
対談中、僕はずっと「萩本さん」と呼んでいたのだが、最後に萩本さんが笑ってこう言った。
「次は絶対に『欽ちゃん』て呼んでね」。
またぜひ「新しい笑い」の話を伺いたい。
そして、そのときは、「欽ちゃん」と呼ばせてもらおう。